毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうやったら自分と大きな目標を信じる事ができるか?~『生くる』執行 草船 氏(2010)

生くる

 執行氏は「実業家、著述家、歌人」、本書帯より物質文明に惑わされ、生きにくい時代に切ない涙を流す現代人へ「生の完全燃焼」を激烈に問う。 (2010 年)

 

 

「信じること」という章で原爆開発を比喩にして説明している。

マンハッタン計画

第二次世界大戦中、枢軸国原子爆弾開発に焦ったアメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員した。1939年に開始され、1945年7月16日世界で初めて原爆実験を実施。マンハッタン計画の費用は、18億4500万ドル、現在の貨幣価値に換算すると230億ドル=2.5兆円となる。(Wiki)

ソ連が米国に遅れる事4年で原爆を製造

 

 

当時の米国において、国力のすべてをかけた大計画であった、中心となる物理学者はアルベルト・アインシュタイン、エンリコ・フェルミ、ジョン・ロバート・オッペンハイマー、つまり世界第一等の3人である。・・・しかし数年もたたないうちに(1949年)ソ連でも原爆が作られた。ドイツ軍に蹂躙されて国内はひどく疲弊し、有能な物理学者も少数しかおらず、かつ金もほとんどないはずの、大戦直後のソ連が作ったのだ。(295ページ)

 

マンハッタン計画の90%は疑いの解消に費やされていた

 

マンハッタン計画に費やされた労力の9割以上が、本当に原爆が作れるか否かという、疑いからくる不安との戦いに消費されていたのだ。これはその後、当時の機密書類の開示やオッペンハイマーらの証言にいっても明らかになった。

その頃、原爆は理論的にはできるのだが、それが本当にできるかどうか、誰も信ずることができなかったのだ。その不安の中で、世界で初めてのことをやらなければならなかったので、あのような大計画になってしまった。(296ページ)

一度できた物質は簡単に複製できる

 

 

この一連の歴史的事実は、マンハッタン計画の最初に、原爆が本当にできることを信ずる者がいれば、すべて百分の一の労力で達成されたことを示している。ここに示されるように、物質の例なら一度できてしまえば、それを信じることが可能となり、二度目からは誰でもできる程度に引き下げられてしまう。これによって、はじめに信ずることが可能となり、二度目からは誰でもできる程度に引き下げられてしまう。これによってはじめに信ずることが如何なる困難を伴うかは、わかって頂けたと思う。また困難だからこそそれを劈いて信ずることができれば、途轍もない価値を生み出すと言えるのだ。(296ページ)

 

信じることは、人間だけが持つ高貴性の証

 

私自身、今まで、信じたことだけが人生に価値を与えてくれた。・・・もし私の議論で、人がそれに耳を傾けてくれたことがあるなら、それは決して論議の内容ではない。信じて生きる私の心に、他者の心が共鳴してくれたことに尽きる。この世は、信ずればいかなることも成し遂げられ、疑えば何のために生きているのかわからなくなる。(294ページ)

先頭に立つ人

 

先頭に立つ人は困難と不安に襲われる。それを打ち破るのは自分を信じる事によってである。出来上がった物をコピーする二番手は容易にできる。しかし三番手が存在する。己のみが信じた事に着手をすれば困難であるが故に価値が生まれる。執行氏は原爆という負の題材を例えに「生きる」ことの本質を説く。

蛇足

 どれだけ自分と大きな事を信じられるか?

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