毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間にとって可視光線とは何か?~『動物はなぜ動物となったか』日高 敏隆 (1976)

動物はなぜ動物になったか (1976年) (玉川選書)

 

 日高敏隆(1930-2009)は動物行動学者の草分け、本書は1976年の一般向け科学エッセイ。

f:id:kocho-3:20150505044826p:plainオンデマンド版 動物はなぜ動物になったか - 玉川大学出版部

 

 

動物が目を持った時、光が生まれた

 

一つの重要な変化が起こった。それは太陽の光が、もはやエネルギー源としてではなく、情報としての意味をもつようになったということである。

イギリスの生物学者ジュリアン・ハックスリーは、こういうことを言っている。「地球上には、かつて光というものがなかった。それはある波長帯を占める電磁波の一部であるに過ぎなかった、しかし、動物が目というものをもった時、その波長帯の電磁波が、正に光になったのである」と。(14ページ)

動物はなぜ“動物”になったか?

 

 

「それは「えさ」を食べるからである。」(11ページ)

 

植物は太陽の光をエネルギー源として利用している。一方動物は「えさ」=有機物の集合体、つまりは他の生物をエネルギー源として利用する。一つの生物を食べたら次の生物を探す必要がある。だから動物は動きまわる能力が必要である。動き回るには光を、そして他の感覚器の情報を活用した。こうして動物は素早く動ける様になった。

カンブリア期の生物爆発

 

アンドリュー・パーカーはカンブリア期に目を持った動物の誕生によって、動物間の生存競争の激化が生物の多様化と進化を誘発したと主張した。(光スイッチ説)三葉虫は目を持つ事により、積極的に他者を捕食することが可能となり、眼をもっていない生物に対して有利となった。つまりは三葉虫が初めて光を情報として活用する事を始めたのである。我々は5億年前のカンブリア期に、動物が光を利用できる捕食者になった事を知っている。

「そこに光あれ!」

 

動物の特徴を現代的に表現すれば①多細胞、②有性生殖、③発生初期に胞胚を形成、④従属栄養的生物、の4点である。もっと一般化すれば運動能力と感覚を持つものを動物と想像すれば理解し易い。「動物が目を持った時、光が生まれた」。カンブリア期の前にも動物は存在した。目のある動物の登場が、光という概念を生んだ。「そこに光あれ」であったのだ、

光とは何か?

 

光とは太陽から生じた電磁波であり、動物にとってはその環境とエサの二つを含む情報である。動物は従属栄養的生物なのであるから他者の情報は必須である。光とは他社の情報である。光はまた動物が他者との関わりなしには存在し得ない事を明らかにする。

動物はなぜ動物になったか?動物にとって光とは何か?これらの問は人間の本質を明確にしてくれる。

蛇足

 人間は光の事を可視光線と呼ぶ。

こちらもどうぞ

 

 

kocho-3.hatenablog.com