毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今こそ自ら小さい差異を作る事の重要な意味、200年前の思想家に学ぶ~『トクヴィル 平等と不平等の理論化』宇野 重規氏(2007)

トクヴィル 平等と不平等の理論家 (講談社選書メチエ) 

政治思想史の研究家宇野氏による、フランスの思想家トクヴィル(1805-59)の「アメリカのデモクラシー」についての解説。

 

 

「デモクラシーこそは歴史の未来である」。誕生間もないアメリカ社会にトクヴィルが見いだしたのは、合衆国という特殊性を超えた、歴史の「必然」としての平等化だった。(本書裏表紙より)

 

 

f:id:kocho-3:20150422043639p:plainアレクシ・ド・トクヴィル - Wikipedia

 

ヨーロッパ史

 

 

 

トクヴィルによれば、過去700年のヨーロッパ史は、すべて平等化の不可逆の発展を示している。・・・文明が発展し、商業が発展するなか、知識は社会的になり、多様な需要に応えるかたちで商人が台頭するようになる。・・・また火器の発明、印刷所、郵便制度、プロテスタンティズム、アメリカ“発見”はいずれも、平等化を推し進める原動力になった。(57ページ)

 

アメリカという民主的共和国はヨーロッパの未来

 

 

トクヴィルは)アメリカこそ「諸条件の平等」がその極限に達した、「デモクラシー」の最も発達した国である。そして「デモクラシー」が共通の未来である以上、アメリカはフランスの未来である。(43ページ)

 

平等社会における不平等

 

 

トクヴィルは、平等社会における不平等と、平等社会における不平等とが、まったく異なる性格を持つことに注目したのである。・・・(トクヴィルを引用して)「不平等がある社会の一般法であるとき、もっとも著しい不平等も目につかない。すべてがほとんど平準化したときには、どんな小さな不平等も人を不快にする。平等がより増大するにつれ、平等への欲求もつねに、より一層飽くなきものになるのは、このためである」(67ページ)

 

平等社会のダイナミズム

 

 

トクヴィルの平等化論の意義は平等化の力がキリスト教的西洋社会を根本的に変えていきつつあることを指摘(した。)・・さらに、トクヴィルが明言していないとしても、その後の人類の歴史は、まさに平等化が、西洋社会の内部と外部において、ある意味トクヴィルの想定していた範囲を越えてまで、普及・浸透していったことを示している。そして、今日なお、そのダイナミズムは進行中である(76ページ)

 

トクヴィルとグローバル社会

 

 

グローバリズムはさらに、それまで国境によって隔てられてきた世界各地の人々を密接に結びつけることで、国境を超えた人間の間の平等・不平等を新しい時代の争点とした。・・・グローバルなレベルでの平等を実現しようとする動きを加速させると同時に、各国の労働者を労働力の世界的再編によって遠い異国の労働者との競争状態に入らざるをえないように追い込んでいる。平等と不平等の生み出すダイナミズムは、世界大のスケールで、人々の生活を直撃するようになっているのである。(170ページ)

 

 
平等と不平等の理論をどう解釈するか?

 

 

デモクラシーが平等を追求するシステムだとすれば資本主義は経済において平等を追求する格好のシステムであった。グローバル経済は価格メカニズムによって徹底的に最適価格を指向していく。我々は消費者としてはその恩恵を享受している。更に、我々は「労働者としてその弊害」に曝されているのであろうか?確かに日本から製造業が空洞アしていく過程は価格メカニズムの結果であり、その弊害に曝されている様に見える。

平等の前では小さな差異こそが重要

 

労働力を含むすべての商品において平等が実現したらどうなるか?全員が同じ鞄を持っていたら?中学生は誰から言われなくてもアクセサリーを付け、小さな差を作っている。逆に平等の前では「小さな差異」こそが重要であると気付く。トクヴィルの平等と不平等のダイナミズムは平等を目指す方向にも、そこから不平等を目指す方向にも、働きうると確信した。

本書によればトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」は現代アメリカの歴代大統領が好んで引用する1冊である。我々の住む世界は200年前の延長線上にある。

蛇足

 

必要なもの、ほんの少しの差(と勇気)である。

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