毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

エベレスト登頂成功と偉大な企業に必要なもの、それは「余分な酸素ボンベ」~『ビジョナリーカンパニー4自分の意志で偉大になる』ジム・コリンズ(2012)

ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる

ジム・コリンズは経営コンサルタントであり、自らがクライマーである。エベレストの遭難事故から圧倒的な企業の本質に迫る。(2012年)

 

登山家ブリーチャーズは山頂を前にして登攀を一端中断

 

1996年5月8日の朝、登山家デビッド・ブリージャーズはエベレスト山の氷に覆われた傾斜面にあるキャンプ3から下を見た。・・・キャンプ3で登山道具をひろって下山し、天候が良くなるのを待って数日後に再び登頂を目指す事にしたのである。(183ページ)

 

ブリーチャーズが登攀を断念する一方、ホールとフイッシャーのガイドが率いる12名は頂上を目指していた。そしてエベレスト登攀の歴史の中で最悪の悲劇(24時間で8人死亡)に巻き込まれる事になる。

成功と失敗を分けた本質は何か?

 

 

5月8日にブリージャーズは下山するという思慮深い決断を行った。おそらくその結果として登頂を成功させ、さらには隊員の命を救ったといえるだろう。・・・最重要な判断は登山隊が山のふもとに着くずっと前に行われている。数カ月前ということもある。ブリージャーズの場合、自宅のあるボストンで計画を練り、準備を進めている時期だった。(185ページ)

 

ブリーチャーズの判断

 

 

ブリージャーズ隊は1回の登頂で使う以上の酸素ボンベを持ち込み、エベレストに3週間余計にいても困らないほど十分に補給品を用意した。5月8日には山頂制覇を急がずに登攀途中で引き返した。いったん下山し、状況改善を待ってもなお十分な補給品があるため、改めて山頂を目指せたからだ。(186ページ)

 

ホール隊の判断

 

 

ガイドが率いるホール隊は1回の登頂に必要な量しか酸素ボンベを持参していなかった。いったん山頂を目指して登り始めると、後戻りはできなかった。・・・山頂を目の前にしてターンアラウンドタイムを迎えると、ルールを破って登り続け、隊員を非常に危険な状況にさらずことになった。(186ページ)

 

余分な酸素ボンベ

 

 

実際に嵐に見舞われる前にやっておくことこそ重要であると認識しているからだ。具体的な危機を一貫して予測することは不可能だ。そこで、彼らは整然とバッファーとショックアブソーバーを用意し、不足の事態に向き合おうとする。実際の嵐に遭遇するよりかなり前から酸素ボンベを余分に積み込むのだ。(191ページ)

 

建設的パラノイア

 

エベレストを遠く離れたボストンでどれだけ最悪の事態をパラノイア(偏執)的に想定し準備したからだという。最悪の事態と建設的な準備を「建設的パラノイア」と呼ぶ。

本書の副題は「自分の意志で偉大になる」である。競合に比べ10倍以上の圧倒的な差をもたらす企業は「建設的パラノイア」を想定し、余裕資金を持つ傾向にあると言う。企業にとっての余分の酸素ボンベはキャッシュである。

1996年5月、エベレストの悲劇の一方で登頂し生還したチームがいた。我々は様々な教訓を汲み取る事ができる。

蛇足

 

起きる事のすべては解釈

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