地球は何人まで養えると思いますか?~『ノーマン・ボーローグ』緑の革命を起こした不屈の農学者
“緑の革命”の中心人物となり、飢餓に苦しむ数億人の人々を救い、世界平和に貢献したとして、一九七〇年、ノーベル平和賞を受賞した農学者、ノーマン・ボーローグの生涯。(2009年刊)
ノーマン・ボーローグ( 1914-2009)
1960年代に小麦等の高収量品種を中心とした新しい農業技術を開発し穀物の大幅な増産(緑の革命)を指導した(メキシコでは3倍もの生産量の向上を達成した)。世界の食糧不足の改善に尽くしたとして、1970年にボーローグにノーベル平和賞が与えられた。(Wiki)
ボーローグの緑の革命
30歳で研究者としてメキシコに赴任して10年のあいだに、ボーローグはメキシコの小麦革命の基礎を築き、最終的にアジアで緑の革命を起こす主因となった3つの改良に着手した。まず数千種類の小麦を交配し、さび病に耐性のある数少ない品種を苦心して絞り込んでいった。次に「シャトル育種」計画にとりかかった。収穫までの時間を半分に縮め、そして、思いがけなく、さび病に強く、世界各地で栽培できる品種の開発に成功したのだ。さらにボーローグは、ひょろりと長かった小麦の苗を、茎が短く、茎数が多い構造に変えることに成功した。機械での収穫に適していて、倒伏しにくう、肥料の大量投入に反応しやすいこの品種ができた結果、収穫量は格段に増えた。(50ページ)
6000個体を交配
交配は行き当たりばったりの作業だ。時間はかかるし、叫び出したくなるほど退屈だ。希望にかなうものが見つかるには1000回に1回、しかもそれが実を結ぶ保証はまったくない。」(55ページ)
1年に2度種まき
一年に二度種まきをすることによって、品種改良に要する時間を短縮するというものだった。・・・1年に二世代の育種、しかも緯度と高度が完全に異なる別々の地域で。この構想は伝統的な品種改良方法を無視するもので、1年に2世代の育成を行うなど、そもそも考えられてもいなかった。・・・(更に海抜差240メートル、緯度差10度という違った環境でさらされる事で)両方の土地を生き抜き順調に育った小麦は、幅広い適応力を獲得したことになるからだ。(66ページ)
ボーローグの革新
緑の革命はメキシコの小麦生産効率を3倍に高めた。ボーローグが実践した事と他の人との違いはわずか1点の様に見える。従来品種改良は作物が育つ場所で行われるべきだと考えられていた。ボーローグは環境の違う2カ所の場所で年に2回、品種改良を続けた。「セランディープの姫が(2カ所で交配する)シャトル育種という私たちの変則的な取組みに微笑んでくれた。」
100億人までは養える
ボーローグは穀物の生産効率を保守的に見ても2倍にした。彼は「現時点で100億人分までなら、世界が食糧を生産できるという確信」(198ページ)を語っている。ボーローグは飢餓を克服する方法を見つけていた。
地道な努力を行ない、そしてただ1点、「シャトル育種」で今までのやり方を大きく変えただけである。それがセランディープの姫という偶然の幸運を引き寄せたのであった。緑の革命という偉業は普通の人におよって達成された。
蛇足
歴史とは普通の人が偉業を達成した蓄積。
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