毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

60年前に提唱されていた、ユーラシア大陸の構造は今を見通す~『文明の生態史観』梅棹 忠夫 氏(1955)

梅沢氏は比較文化人類学者、ユーラシア大陸における諸文明の構造を大陸の環境という視点から分析する。本書は1955年の出版、戦後の政治体制が固まり、国際社会に再参加を始めた時期に執筆された。(文庫は1998年)

f:id:kocho-3:20150406073302p:plain

 
ユーラシア大陸

 

アジア、ヨーロッパ、北アフリカを含む全旧世界は、ふたつのカテゴリーにわけることができる。ひとつは、西ヨーロッパおよび日本を含むところの、第一地域である。もう一つは、そのあいだにはさまれた全大陸である。

 
第一地域

 

 

歴史の型から言えば、塞外野蛮の民としてスタートし、第二地域から文明を導入し、のちに、封建制、絶対君主制ブルジョア革命をへて現代は資本主義による高度の近代文明をもつ地域である。(201ページ)

 

 

暴力の源泉からとおく、破壊からまもられて、中緯度温帯の好条件のなかに温室そだちのように、にくぬくと成長する。自分の内部からの成長によって、なんどかの脱皮を繰り返し、現在にいたる。西ヨーロッパも日本も、同じ条件にあった。(203ページ)

 

第二地域

 

 

もともとは古代文明はすべてこの地域に発生しながら、封建制を発展させることなくその後巨大な専制帝国をつくり、その矛盾になやみ、おおくは第一地域諸国の植民地もしくは反植民地となり、最近にいたってようやく数段階の革命をへながら、新しい近代化の道をたどろうとしている地域である。(201ページ)

 

 

第二地域の中には、四つの大共同体-あるいは世界、あるいは文明圏といってもよい-にわかれる。すなわち(Ⅰ)中国世界、(Ⅱ)インド世界、(Ⅲ)ロシア世界、(Ⅳ)地中海・イスラーム世界である。いずれも、巨大帝国とその周辺をとりまく衛星国という構造を持っている。(203ページ)

 

現代は第二地域の勃興期

 

本書は1955年著者がアフガニスタン、インド、パキスタンへの調査旅行の際に、感じたことを体系的にまとめ、文明に対する新しい見方を示した。著者は「現代は、ひとくちにいえば、第二地域の勃興期」であり、第二地域は引き続き「巨大な帝国と衛星国という構成を持った地域」、そして「それらの帝国は自己拡張運動をおこす可能性」と記す。

北米の動きに触れられていない点は差し引く必要があるが、ユーラシア大陸という視点は60年たった今も説得力を持つ。第一地域の西は二つの大戦西欧の分裂と、ユーロによる再統合という流れだとする。第二地域の東に属する日本はすでに一瞬にしてこの過程を通過してしまった様に思う。

蛇足

 

新大陸アメリカは第一地域の東端と西端の真ん中に位置する

こちらもどうぞ

 

kocho-3.hatenablog.com