毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

私もあなたも"拡張可能な、柔らかな空間"に住んでいる~『空間から読み解く世界史:馬・航海・資本・電子』宮崎正勝(2015)

「空間」から読み解く世界史: 馬・航海・資本・電子 (新潮選書)

宮崎氏は世界史をテーマに著作を重ねる。「空間革命」という独自の歴史観から、五千年の人類史を一気に俯瞰! 乾燥地帯で始まった穀物栽培、騎馬に よる異文化統合、大陸を結ぶ大西洋支配、地球規模の産業革命、そして無限大のネット空間……人は自らの活動空間を拡大していくことによって進化を遂げる(2015年刊)

 

 

空間軸で考える

 

世界像を転換させるような世界史の大きな変動は大航海時代しかない。地表の7割は海である。ユーラシアの陸で持続してきた世界史が、大航海時代を境に三つの大洋と周辺の諸大陸を合せた地球規模の世界史に転換しているからだ。・・・世界史はユーラシアを舞台とする「陸の歴史(小さな世界史)」と、「地表の7割近くを占める大西洋、インド洋、太平洋が多角的に陸地を結びつける歴史(大きな世界史)」が接合しているのである。(11ページ)

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 ローマ帝国の全盛期にエジプトのアレクサンドリアで作られた天文学者、地理学者プトレマイオス(83-168頃)の世界図地図礼賛 古い地図

陸地の2/3がユーラシア、1/3が赤道以北のアフリカであり、・・・プトレマイオスの「世界図」は「ユーラシアの陸の世界図」と言ってよい。(14ページ) 

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1570年、ジェノバの地図出版業者オルテリウスに収められた「世界図」

大西洋、太平洋、インド洋の三大陸とユーラシア、アフリカ、南・北アメリカの諸大陸が描かれている。この「世界図」では世界の中心が大西洋になっている。(14ページ) 

 
空間革命とは何か?~ドイツの政治学者カール・シュミット

 

 

まず空間規模が大きく変化(拡大)し、次いでそれにふさわしい空間秩序の形成がなされると言うのである。空間革命は、大規模な歴史空間の拡大が新たな空間秩序を生み出すことに着目する歴史構成概念に読み換えることができる。そうした空間革命を強力にサポートしたのが、ウマ・船(航海)・資本・電子だった。(19ページ)

 

柔らかい空間 

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                                                                     (20ページより整理して作図)

 

宮崎氏によれば世界は6回の空間革命が生じたという。最後の空間革命は電子によるものと説明する。我々は電脳空間とかサイバースペースという表現を通じ馴染んではいる。上の二つの世界図では世界の捉え方が根本的に変化した事が分かる。視点の中心がどこにあるか、世界観の大きさがストレートに理解できる。

 

現代物理学は空間と時間が同一である事を示している。そうすると空間と時間は拡張できる事がイメージできてくる。誰もがは自らの意志で、空間を拡張する事も縮小する事も可能なのである。我々は拡張可能な“柔らかい空間”に住んでいるのだ。それならその新しい空間を愉しめばいい。

蛇足

貴方の世界図はどこまで広がっていますか?

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