毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

情報とはなにか? "差異(ちがい)を有む差異(ちがい)"という視点から~『精神と自然』グレゴリー・ベイトソン(1979)

精神と自然―生きた世界の認識論

 グレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson, 1904年- 1980年)は、アメリカ合衆国文化人類学・精神医学などの研究者。ニューギニアの部落からサイバネティクスまで、また精神分裂の世界から生物の進化までを今世紀の知の辺境を跋渉した巨人が、深い言葉で綴る。“生きた世界の認識論”。2006年普及版(原書は1979年)

f:id:kocho-3:20150311073046p:plain

 

黒板にチョークで厚みのある点を作る

 

 

黒板上にチョークの先をメリメリと押し潰して厚みのある点を作る。・・・今黒板面に対して垂直に私の指-触覚の最も鋭敏な部分-を近づけていく。その場合、段差の感覚は生じない。しかし盛り上がりを横切るようにして指を動かせば、はっきりした情報が手に入る。・・・変化のない黒板の上を滑らかに進んでいた私の指が、盛り上がった点の縁と出合う、時間上のその点に一つの非連続、一つの段がある。・・・我々の感覚系が、出来事(変化)に対してのみ作動することを、この例は示している。(133ページ)

 

カントを引用し、情報を“ちがいを生むちがい”と定義する

 

この一本のチョークは幾百万もの“可能なる事実”を含んでいるが、その中でごくわずかなものだけが、事実に対して反応する能力を備えた存在の行動を左右することによって、真実になると。

カントの事実という言葉を、私は差異(ちがい)という言葉で置き換えて次のように指摘したい。このチョークには無限の差異が可能性として含まれているが、その中でごく一部のものだけが、より大きな存在の精神プロセスの中で、実効的な差異(各情報項目)になると。それら、ちがいを生むちがい、こそが情報なのである。(134ページ)

情報とは何か

 

チョークは黒板の上に厚みのある点を作った。チョークは黒板の表面に他の部分とは違う表面という差異(ちがい)を生んだ。チョークの持つ様々な特性、色、形、におい、、、その中で”厚みのある点“という関係性でのみ差異を生じさせた。黒板を拭いてしまえばチョークは粉として飛び散ってその差異もまた消滅する。

情報とはある違いを生じさせる関係性のこと、と言い換える事ができる。冒頭の企業の文脈に戻れば、企業は”差異を生む差異“を作り出している存在とも言い換える事ができる。

ベイトソンは“any difference that makes a difference”と記す。

蛇足

 私はどういう関係性で、“差異を生む差異”を作り出せるか?

こちらもどうぞ

 

相手の言葉に"いらっと"した時思い出す言葉「ただの言葉なんてない ! 、解釈は様々」~コミュニケーション理論の古典が説明する事 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ