毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今更ながら、民主主義の語源から眺めてみると、、、~『民主主義という不思議な仕組み』佐々木 毅 氏(2007)

民主主義という不思議な仕組み (ちくまプリマー新書)

佐々木氏は 政治学の研究家、誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?2007年刊

 

ポリスは法という抽象概念によって形成

古代ギリシャのポリス(都市国家)は、都市、都市国家、市民権または市民による政体を指すギリシア語。

 

 

ポリスの人々にとっての法という共通の非人格的ルールに対する服従が全てに優先し、そこでは法に対する自発的な服従が広く定着しています。・・・ポリスでは、言論(説得)が人々を動かす主たる道具でした。・・・ギリシャ式では指導者もまた法の下であり、彼への服従はあくまでも法への服従の服従の結果なのです。この法によって支配される政治の世界、言い換えれば、法の下での平等な関係を踏まえた自治の世界、政治共同体がポリスなのです。(24ページ)

ポリスが民主主義の源流

 

ギリシアの民主政の大きな転機になったのは、海軍が重要な役割を持つことになったことです。というのは、海軍は十分な財産を持たない貧しい人々を、漕ぎ手ておして大量に動員することにつながり、結果として彼らの政治的発言力を大いに強化することにつながったからです。(27ページ) 

民主制が抱えた障害を制御する

 

 

 古代人は大衆のみならず、王も貴族も権力を乱用することをよく知っていました。そこで彼らが最終的に達成した一つの結論は王、貴族、大衆がお互いに抑制均衡しあうことによって、権力の乱用を防止する仕組みが最も優れているということでした。(35ページ)

 

民主主義の語源

デモクラシーの語源は、古代ギリシアの、「デモクラティア」で、「人民・民衆」の意味の「デモス」と、「権力・支配」の意味の「クラティア」を組み合わせたもので、紀元前5世紀にこの言葉が生まれている。西欧の民主主義の原点が古代ギリシア都市国家であり、そこでは直接民主制と権力の分立が取り入れられてきた。

ギリシアから現代の我々へとつながる潮流

 

佐々木氏はアメリカという国そのものが政治的実験の場であったと言う。「代議制を伴った民主政治の実現は、もはや経験済み」(47ページ)であり、「民衆の統治に付きまとう派閥の弊害を抑制」する為に連邦政府を樹立、アメリカ憲法を制定したと整理する。

 

「現存する世界最古のアメリカ合衆国憲法は、「政治自身が政府を制御する」という彼らの理想を実現したものでした。(52ページ) 

我々は西欧社会の枠組みの中に居る

 

我々は民主主義が素晴らしいものだと教わる。それは我々の政治体制はギリシアに始まり、アメリカで近代的な制度に形成された民主主義の系譜に位置づけらたという意味でもある。

民主主義はコストのかかる制度である。これはギリシアから現在に至る2500年の歴史の中で民主主義が機能した時期は決して多くは無かった事からも判る。2500年の間に民主制が機能したのは古代ギリシャ、中世イタリアの都市国家(フィレンツエ)などごく僅かな時期と地域でしかない。

民主主義の弊害を昔も今も完全に制御はできないし、問題を抱えるとても脆いものだという事である。民主主義が素晴らしいものだという発想は落胆を生じさせているとも言える。

蛇足

どんな時民主主義の欠点を実感するか?

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