毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

成功の秘訣は"長い時間軸で重要だと思える事にフォーカスする事"~『大本営参謀の情報戦記』堀 栄三 氏

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

堀 栄三、1913年(大正2年)- 1995年は、日本の陸軍軍人、陸上自衛官。階級は陸軍中佐、陸将補。太平洋戦中は大本営情報参謀として米軍の作戦を次々と予測的中させて名を馳せた。

f:id:kocho-3:20150203070539p:plain

本の時間

 

 しょせん戦略の失敗を戦術や戦闘でひっくり返すことは出来なかったということである。この際の戦略とは、太平洋という戦場の特性を情報の視点から究明し、(1944年のサイパン玉砕の)もう10年以上前に「軍の主兵は航空なり」に転換し、「鉄量には鉄量をもってする」という戦略である。(145ページ)

アメリカの時間軸

 

 米軍がいつ頃から太平洋で戦争をすることを考えていたかは、もちろん詳らかではないが、・・・(米国駐在の経験のある寺本中将は堀に)大正10年以来という言葉を使っている。その時期(1921年)はちょうど、ワシントン会議で日米の海軍戦力が3対5と米国に押し切られた年と一致する。(151ページ)

情報戦とは何だったか?

 

 常に断片的なものでも丹念に収集し分類整理して統計を出し、広い川原の砂の中から一粒の砂金を見つけ出すような情報職人のような仕事であった。 

株価にみる情報の断片

 

情報参謀の机には、毎日アメリカ国内のラジオ放送の内容が届けられたという。堀氏は、株価が並ぶ数字を見つめているうちに、かんずめ会社と製薬会社の株価があがって、しばらくすると太平洋でのアメリカ軍の作戦が始まることを見抜く。アメリカ軍は、派遣兵士様にかんずめとマラリアのくすりを大量にメーカーに発注していたのである。(346ページ) 

堀参謀の判断の哲理

 

「特殊性と普遍性を区別すること。」哲理とはだたそれだけ、枝葉と根幹とを見極めることであった。堀は自らマッカーサーになったつもりで考えた。(211ページ) 

マッカーサー参謀と呼ばれて

 

堀氏は情報参謀として米軍の攻撃パターンを正確に予想し、マッカーサー参謀と呼ばれた。その堀氏は戦後40年たった1985年に一人の米国人の訪問を受ける。

旧米軍の中枢部にいた参謀で、現在は戦史研究家の肩書を持ったC氏が、オリンピック作戦(米軍の日本上陸作戦)のことで聞きたいといって、奈良の拙宅まで出かけてきた。堀参謀は、「上陸の地点、時期、兵力などをあまりに的確に判断し過ぎていた」と指摘して(調査の為に訪問してきた。)(271ページ) 

f:id:kocho-3:20150203070700p:plain堀栄三 - Wikipedia

どれだけ長い時間軸で考えられるか?

 

本書から学ぶべきは思考の時間軸であり、特殊制と普遍性を区別する哲理である。米国は日本より長い時間軸で考えていた。米国の時間軸が、ワシントン会議から戦争開始までの20年余、あるいは戦後からC氏訪問の40年、だった。日本は極めて短い時間軸で考えていたという事であろう。

株価は時間軸の違いを折り込む

 

株式投資にも時間軸の尺度がある。株価の形成が大きな事件を先取りして株価が上がる事が魔法の様に言われる。堀参謀が投資家だったら大きな事件が起きる前に投資する事が出来たであろう。投資家の中にはより長い時間軸で物を考えている人がいるという事である。

最も重要な事にフォーカスすること

 

戦略の失敗を戦術で取り返す事は出来ない。戦略には長い時間がかかり、戦術は短期間に決まる。未来から考える人にとって重要な事は「長い時間軸で重要だと思える事にフォーカスする事」である。

蛇足

 

大事を成す時、時間軸50年では短かすぎる

こちらもどうぞ

 

「地球外知的生命探査」=宇宙人探索、が科学と言えるのか?~地球サイズの文明時間を拡張する為に - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ