毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

結局お金は幻想だと思う理由、今やお金と労働は乖離している~『「1929年大恐慌」の謎』関岡正弘氏

「1929年大恐慌」の謎

関岡氏は石油産業での経験から執筆活動を行う。「日本の『バブル崩壊』と『失われた10年』をいち早く予見した」本書は1989年刊、そして2009年に再販。

f:id:kocho-3:20150118221557p:plain

 恐慌とは。「富」ないし「蓄積された価値」が「投機」によって破壊されることによって起こる現象と定義する。
恐慌とは何か?

 

 恐慌は1825年の英国にその原型があるとする。そしてそれが「19世紀の恐慌は、供給サイドの限界によって引き起こされる」(255ページ)と説明する。そして1929年大恐慌を20世紀型恐慌といい、「ストックの世界における投機の崩壊と、それによって発生したΔC(キャピタルゲインによる限界需要)の逆転という新しい要因」(256ページ)と言う。20世紀は石油という物質的基盤がある事により供給サイドの限界が発生しない分だけ実物経済が拡大する。そし金兌換を止めた金融システムは実物経済の制約を受ける事なく銀行の信用創造システムにより投機を誘発・拡大させる。歯止めがなくなったのである。

労働が供給の限界要因にならない世界

 

 

ロボットが一般化したら、どういうことになるのだろうか。あるいは、趙大型コンピュータと複雑なプログラムが自動的に遂行する膨大なる計算業務は、労働価値説とどう関係づけたらよいのだろうか。・・・もしある商品の生産が、社会的にすべてロボット化されてしまったとしたら、どういうことになるのだろうか。つまり「生産価格」の構成要素から労働がすべて排除されてしまう場合である。それは、労働価値説の定義では、価値を生まない生産ということになってしまう。(216ページ)

 

それはいつから始まったか~1920年代の米国社会

 

 

大量のトラクターがアメリカの農村に流入し始めると、直ちに黒人労働者の職を奪い始める。農業の機械化が革命的に進行したのだ。それはマクロ的にみて、人類の社会構造の大変革が始まった事を意味していた。基本的に多数の人間を、農村労働に縛りつけておく必要そのものが消滅してしまったのである。(110ページ)

 

繰り返される投機の崩壊

 

本書は1989年正にバブル経済の頂点で執筆された。それから25年の間にITバブル、アジア通貨危機リーマンショックと金融バブルの発生とその崩壊が何度も繰り替えされている。いわゆる「金融資本主義」の拡大によって、資本が自己増殖と崩壊のサイクルを定期的に繰り替えす事となった。

1920年代の米国、黒人労働者は農業労働から解放されたのか、それとも排除されたのか?今も世界でお金の肥大化と労働との乖離が進んでいる。現と1929年の大恐慌の時代、一直線につながっている。

蛇足

 

結局お金は幻想

こちらもどうぞ

 

米国「繁栄と狂乱の1920年代」は現代の大量消費社会に初めて到達した時代だった~1931年出版「Only Yesterday」 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

 

 

フラッシュ・クラッシュ~Artificial Intelligenceの視点から - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ