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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

心とは抑制するもの、だとすれば抑制を外すか抑制の効かない行動が重要~『ダンゴムシに心はあるか』森山 徹 氏

ダンゴムシに心はあるのか (PHPサイエンス・ワールド新書)

 森山氏は比較認知科学の研究家。

ダンゴムシにも「心」があると考え、行動実験を試みた若い研究者がいた。ダンゴムシから「常識」では考えられない突飛な行動を引き出すことに成功、大脳がないダンゴムシにも心があり、道具を使う知能もあることを示唆する。2011年刊

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予想外の事をさせてみる

 

「私の実験の目的は、ダンゴムシを未知の状況に置き、彼らの心に予想外の行動を自発的に発現して貰うことです。」

ダンゴムシに通路を歩かせる実験を行う。丸い通路は左右が水の入った堀で挟まれ、中央には障害物が設けられている。ダンゴムシは必要もないのに障害物に乗り上げる行動をとる。そしてその乗り上がりの発生頻度は時間と共に増減を繰り返すという。

「乗り上がり」は予想外の行動

 

(乗り上がり行動は)生存に対する有用性がみられないために意味不明です。ダンゴムシにおける「乗り上がり」は捕食者にみすみす姿をさらすことに相当します。・・・ダンゴムシがこの予想外の行動を(障害物の目印に使うという)「新しい有用な行動」として機能(=知能)させようとするのは自然なことです。(188ページ)

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乗り上がりには直接的な意味は無い、

 

心とは何か?

 

 心の働きを「未知の状況における予想外の行動の発現能」として、実験的に引き出します。そして、しばしば、知能がその能力の自然な延長として現前されるのです。・・・心の科学は、大脳を有しないダンゴムシから知能を引き出すことで、大脳を前提とする既存の知能観の枠を取り払い、「知能の遍在性」(知能は生物がみな持つ)を唱える事ができるのです。(189ページ)

 

 

心を込めて贈り物をお送りします

 

森山氏は心と呼ばれるものの働きは行動を抑制する事が主であると説明する。そしてこの行動の抑制は脳だけの機能ではなく、神経系全体で表れる。

「心を込めて」とは贈り物を差し出す事にフォーカスするという事であり、心はその時他のすべての働きを抑制している事になる。

「予想外の事をやってしまう事」の重要性

 

人間の長所は熱中できる事と言われる。熱中する以外のものは心が制御してくれる事になる。それでは熱中するものはどうやって見つけるか?

ダンゴムシが意味もなく障害物に乗り上げた。森山氏はそれを知性だと考え、知性とは「やってしまった事に対してけりをつける」こと(188ページ)と言う。要は予想外の行動が無いと始まらない。

我々は文化的にも社会的に抑制する事に慣れてしまっている。そして抑制された中でしか熱中するものを見つけていない。抑制を外すか、抑制の及んでいない新しい事に取り組むか、これによってしか心の底から熱中するものを見つける方法は無いのかもしれない。

蛇足

 

知性には予想外が必要

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