毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今更ながら、津波は波の高さより波長に注意すべきである、~神永正博氏「食える数学」より

食える数学 (角川ソフィア文庫)

神永氏は数学と工学の研究家。 数学は、実学だ。その数学で、何ができるか?―2010年刊、東北大震災前の出版(2015年1月に文庫化予定)

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波長の短い通常の波

 

普通の波の波長は、数メートル程度です。たとえば波長4メートル、高さ20センチとして海岸幅1メートルに押し寄せる波の水の量を考えてみましょう。波の形を思い切り単純化して、三角柱として計算してみると約400リットルにしかなりません、一般的なドラム缶2本分、たしかにたいしたことにない量です。(66ページ)

 

波長が長い津波は押し寄せる水の量も大きい

 

 

これに対して津波はふつうの波よりも遥かに波長が長く、数十キロメートルから、ときにには数百キロメートルという長さになります。そこで先程と同様のざっくり水の量を計算してみると、たとえば波長が10キロメートルの津波の場合、高さは20センチであっても、押し寄せてくる水の量は1000キロリットルにも達します。なんと、一般的な25メートルプール約3杯分と同じくらいの量です。(67ページ)

 

津波非線形な孤立波(Wiki

 

ソリトン(英: soliton)は、おおまかにいって非線形方程式に従う孤立波で、次の条件を満たす安定したパルス状の波動のことである。

1.伝播している孤立波の形状、速度などが不変。(粒子の「慣性の法則」に相当する)

2.上の条件を満たす波同士が衝突した後でも、お互い安定に存在する。(波の個別性の保持、衝突前後の運動量保存)

この2条件より、この孤立波は粒子性(粒子としての性質)を持つ。

津波の性質を改めて知る。

 

地震により広い範囲で海水が振動する事によって津波は発生する。地震の発生領域が広ければそれだけ長い波長を持つソリトン波を形成する事になる。我々が通常目撃する波は波長がせいぜい数メートルの波。一方津波は数百キロメートルにも及ぶ波長の海水が振動する現象である。波高が2メートルといっても津波の持つエネルギー量はとてつもなく大きい。

海水の移動量を三角注とおけば(波長×波高)/2×幅となる。波長が数百メートルに及ぶというケースでは膨大な海水が移動する事になる。そしてソリトン波の特徴として波の形状が不変=移動する海水の量が変わらない、事になる。津波の波高が2メートルでも浅瀬に来ると波高が一挙に大きくなる現象もソリトン波からイメージできる。

移動する海水の量は水深が変化しても変わらないから浅くなると波高が高くならないと同じ海水が移動できない。

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気象庁 | 津波について津波とは大きな海水の塊が押し寄せる事だった。

蛇足

 津波の大きさは波高より波長の長さ

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