毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

インクジェットとはビット(情報)でアトム(原子)を操作する事~3Dプリンターの本質、「インクジェット時代が来た!」より

インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書)

 インクジェットとは、精細な液体の粒を「飛ばして」「積み重ねる」技術。

この技術の持つ本質は何か?2012年刊。

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実用的なインクジェットは1970年代のコンティヌアス式インクジェット

 

インクジェット

 

 「何らかのデジタル信号を受けて、インクを液滴にして空間に吐出し、対象物に接触することなく印刷を行う」技術全般を指すと思っておけば、間違いないでしょう。実際には、飛ばすのは色付きのインクとは限りませんし、「印刷」という言葉の定義もあいまいなところがあるのですが。(30ページ)

 

インクジェットは印刷から造形へ

  

あらゆる物質は原子や分子で構成されています。ぞれらを自在に積み上げれば何でも作り出せる、それがものづくりの究極の姿でしょう。・・・単純な文字を打ち出すだけだったインクジェット技術が、数十年でフルカラーの立体造形をつくりだすようになり、精密な電子機器を作れるまでに進歩してきたというわけです。(201ページ)

アトムがビットに近づく

 

 

原子(アトム)で構成されるものはビット(コンピュータ上で情報を表す最小単位)ほど自由にはふるまえません。しかし、インクジェットを初めとする技術により、アイデアをモノとして具体化するコストは圧倒的に下がりつつあります。アトムもビットに少しずつ近づいていき、あらゆる産業が知識集約型に向かっているのが現代社会と言えます。(202ページ)

 

 

インクジェットで物質を作る

 

インクジェットを改めて定義してみる。インクジェットとは「情報に基づいて物質の微小な粒子を飛ばして対象物に付着させる事」。

物質を原子に置き換えてみる。情報に基づき原子を飛ばして「物」を作る事がイメージできる。要は必要な原子だけを使って物質を成形するので物理的制約から解放され、無駄が無くなるという事。

従来の印刷ではまず情報を版に転写する。そして版にインクを付けて転写する。これには版を作る物理的コスト、版にインクを塗布し転写する事に伴う無駄なインクなどがある。インクジェットは版を作る必要も無駄になるインクもない。情報から物質まで一直線につながる事となる。

情報を物質に置き換える事の意味

情報を物質に置き換える事の意味は何だろうか?情報が物理空間に存在する事で物理空間に影響を与える事が始めてできる。我々は長年にわたり物理空間に物質として存在する事が大切な事だと考えてきた。物理空間の物質は他の情報から切り離され固定される。そしてそれは通の情報として共有できる事になる。我々は未だ情報だけで完結する世界には慣れていない。

蛇足

 インクジェットの祖先は1867年大西洋横断電信ケーブルの信号記録。

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