毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

天気予報は未来予測ではない、過去データを表示しているだけ~神永正博氏・小飼弾氏「未来予測を嗤え!」

 未来予測を嗤え! (oneテーマ21)

 予測では知ることがきない、人類にとって大事なことがある。人気の書評家と気鋭の数学者による白熱講義! 

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どうして天気予報の精度が上がったか?

 

 

昔はせいぜい百葉箱で温度や湿度を測るくらいでしたが、1930年代にはラジオゾンデという観測機器を気球で飛ばして上空の気象データを計測できるようになりました。地上からは気象レーダーや、風に電波を当てて観測するウィンドプロファイラ。海上では船やブイ。さらに、宇宙からは気象衛星が常時観測を行い、これらの気象データは国際的に交換されています。・・・観測によって得られるデータが多ければ、予測精度が上がるというより、細部までくっきり見えるようになる。(61ページ)

 

観測精度を向上させる事が重要

 

 

仮に精度のよい予測モデルを作れたとしても、観測精度を向上させる方がよほど簡単ですから。天気予報にしたって、雨雲がこっちに来るのが見えれば、予測する必要はないでしょう。だから予測より観測なんですよ。(63ページ)

 

統計学の役割はデータ圧縮

 

 

ビックデータ以前、統計学の一番の役割はデータ圧縮でした、十分な観測データもそれを処理するコンピュータもないから、「だいたいこんな感じ」という形に圧縮するしかなかったのです。(64ページ)

 

コンピュータは実は観測しているだけ

 

例えばGoogleの検索は検索された頻度の高い順にキーワードを並べ替えるだけであり、予測している訳ではない。Amazonはすべての商品をIT上に陳列しているだけ。株式のコンピュータ裁定取引は割安株を買って高くなって売るという単純な取引を高速でやっているだけで複雑な処理はしていない。本書はこれらのものは予測ではなく、観測に長けている事だと説明する。

結局未来は「どうしたいか」

 

本書のタイトルは「未来予測を嗤え!」。そもそも人間の意志を予測する事はできるのか?我々はコンピュータが未来を予測している様に感じている。実は過去データただ単に精緻に観測し、それが予測である様に表示しているだけ。未来は本来「どうしたいか?」という意志が反映されるものだからである。明日の夕御飯に何を食べたいか?それは明日の午後の気分によって決まる。あるいは新しいレストランができたら行きたいと思うかもしれない。シミュレーションは過去を観測しているだけ。天気予報の精度は上げられても、人間の意志はそもそも予測不可能である事に気づく。本書の言うとおり未来は「人間の新しいチャレンジの積み重ね」である以上、予測するものではなく作り出すものである。

蛇足

 

未来予測とは自分が何をしたいかを考えること。

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