毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は西洋文化圏に属している、そででは西洋文化圏とは?~岩波新書「ヨーロッパとは何か」(1967年)

ヨーロッパとは何か (岩波新書 青版 D-14)

ヨーロッパの思想や制度を熱心に受け入れることにより、驚異的ともいえる近代化を達成してきた日本。それでいて、ヨーロッパとは何かについて、真に学問的な深さで洞察し、議論した書物は意外に少ない。本書は1967年刊、故増田氏は西洋経済史・文化史の研究。

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三圃式農業が発展し"分散型"中世都市を形成 

 
ヨーロッパの3つの柱

 

 

 

ヨーロッパとは、古典古代の伝統と、キリスト教、それにゲルマン民族の精神、この3つが文化の要素としてあらゆる時代、あらゆる事象に組み合わされたものだということになっている。・・・古代世界というものは、ヨーロッパには直接つながらない、いわばヨーロッパの歴史の始まらない時代のことだという考え方が成り立つ。・・・本当のヨーロッパ史がはじまるのは、3つの要素がいっしょになったときからである。(64ページ)

 

ヨーロッパが生まれたのはいつか?

 

 

ヨーロッパ人が、自分たちの世界をキリスト教圏だと自任するようになるのは歴史的にはよほど後世のことで、イベリア半島イスラム市販をはねかえしてゆく過程、とりわけ十字軍の永い遠征の時期からではなかったろうかとさえ思われる。もしそうだとするならば8、9世紀でなく、12、13世紀という時代が、意識の面でのヨーロッパの成立期だと言えなくもない。してみれば、8、9世紀のフランク王国は、あくまでヨーロッパの枠をつくったものの、ヨーロッパの舞台の骨組みをつくったものということになる。いずれにしてもそれ以前にヨーロッパの誕生を考えるとことはできないのである。(183ページ)

 

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ヨーロッパの精神性

 

3つの柱が混ざって形成されたのは合理性を追求する精神であり、それが日本を含む世界に勢力を拡げていると指摘する。それは①キリスト教の持つ生活共同体の創造する力、②三圃式農業と密集集落の出現、これらが大きく影響する。①は「労働と信仰を結合した規律ある経済単位を作るというヨーロッパの実践的な修道院精度」(187ページ)、であり、②は村の耕地を夏畑・冬畑・休耕地にわけ重い有輪犂による能率的な三圃式農業とその中心に20戸程度、200名前後が居住する形態である。

ヨーロッパ体制の特殊性

 

 

出来があったヨーロッパは、まずもって帝権はドイツに、教権はイタリアに、という二つの中心をもち、やがて学芸はフランスすなわちパリにという3つの中心をもつユニークな文化圏となった。この伝統は中世の全般を通じて保持せられ、ルネッサンス、宗教革命、そしてイギリスにおこった産業革命をもって、いよいよ特色ある地位を、ヨーロッパ以外の全世界に誇示することとなったのである。(196ページ)

今から50年前の本書から学ぶ事

 

我々は明治維新以来、政治体制、経済体制、学問体系すべてにおいて西欧社会の流れの中に位置づけられる。第二次世界大戦を「日本固有のものを強調し、日本はこれでよいのだという独善論に陥ちいった」(25ページ)と指摘する。

ヨーロッパの普遍性は合理的行動様式の蓄積と地域的多様性により形成された。現在の日本を見回す時、東南アジアの経済的拡大を背景とした多極化の進展が指摘できる。アジアにおいてもヨーロッパと同様の地域的多様性が成立する時代に入ったのだと考えられないか?

アジアにはキリスト教の様な宗教観の共有は無いものの、ヨーロッパの階級制といった社会の縦方向のモビリティの疎外要因は少ない。ヨーロッパの歴史は戦争の歴史、アジアが"今更"戦争を繰り返して多様性を獲得する必要は無い。

蛇足

 

8世紀フランク王国は辺境、そこに変革が生まれる

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