毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

物質と物質でないものを区別する方法を知っていますか?~1958年「科学の方法」より

科学の方法 (岩波新書 青版 313)

中谷宇吉郎(1900ー1962)は、日本の物理学者、随筆家。世界で初めて人工雪の生成に成功した事で知られる。1958年刊

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物質とは何か?

 

 

物質には、色や形や硬さとは無関係に、質量と称すべきものがあって、それは天秤に、目方として現れる。別の表現では、目方のあるものが、物質なのである。(61ページ)

 

物質とは人間が作り出した概念

 

 

物の目方は、現在の天秤の精度の範囲内では、状態が変わっても、不変である。それで目方として現れる性質のもとを実質(質量)とみて、そういう質量をもっているものを、物質としたのである。それで物の物質といっても、全然人間を離れたものではなく、いわば人間が自然から彫りだした概念であるから、それが変化してエネルギーになっても、不思議ではない。というのは、エネルギーもまた、人間が自然界の変化に対する現象の中から彫りだした概念であるからである。(64ページ)

 

エネルギーとは何か?

 

エネルギーは、物理学の方では、ちゃんとした定義があるが、要するに、自然界に起こっているいろいろな変化の原動力になる能力と思えばよい。(64ページ)

物質とエネルギーの和

 

現在の科学は、自然界の実態を、物質とエネルギーの和であるとする。そういう渾然たるものが実態であって、それが、ある場合には、物質としてあらわれ、ある場合には、エネルギー(ちから)としてあらわれる。・・・目方のあるもの、すなわち物質と、目方のかからない“ちから”、すなわちエネルギーとは、本来同じものである。(71ページ)

 

物質もエネルギーも同じ“こと“を示す概念

 

物質もエルギーも「人間が自然から彫りだした概念」である。E=MC^2は物質とエネルギーは光速の二乗に比例して交換しうる事を現している。EもMも人間が別々に科学として積み上げてきた概念であり、この式により概念の交換を表現した事になる。

物質もエネルギーも概念だという事を忘れると、物質とエネルギーが交換可能である事がイメージできなくなる。物質とエネルギーは“同じ事”であり、別々の事象の積み上げによって別々の概念と捉えられてきた。つまりは同じ概念を別の表現をしてきただけである事に気づく。

 
蛇足

 

 

物質とエネルギーを包摂する概念は何と呼ぶのか?

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