毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

奈良の大仏はどうして高さ16メートル?~書評「大仏はなぜこれほど巨大なのか?」武澤秀一氏

大仏はなぜこれほど巨大なのか (平凡社新書)

大仏からインドのストゥーパ、ローマ神殿まで、世界の宗教建築はさまざまに存在するが、その不思議をシンプルに突き詰めてゆけば洋の東西を問わず発見できる「真実」がある。

武澤氏は建築家、2014年刊

 

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世界最大級の木造建築、大仏殿

一般的にいって建物に覆われず大空の下にある場合、物は実際より小さく見える傾向がある。無限定の空間の中に巨大な物がある場合、大きさや距離を目測しようにも漠然としていて基準がないため、その大きさがつかみにくい。・・・逆に限定された空間の中にあると、比較の基準となる物が同一視野にあるので、スケールを把握しやすい。つまり同じ物でも、建物の中にある場合は、外で見る場合にくらべて大きく見えることがあるということだ。そのせいであろう、大仏殿の中に大仏は、磨崖仏としてある奉先寺洞の大仏よりも、巨大さがリアルに迫ってくるのである。(28ページ)

洛陽はインドから伝来した仏教文化の集積地

洛陽から南に10キロあまり、黄河支流、伊河のほとりの岩山に龍門石窟が開かれた。・・・その中にあって巨大な盧舎那仏で知られるのが、7世紀後半の唐代に開かれた奉先寺洞である。“洞”と呼ばれているが、石窟をなしているわけではない。ゆるい傾斜面をなす岩盤が巾30メートル、奥行40メートルにわたって削り取られ、そこに出来た広場状空間の壁面に9体の巨大麿崖仏群が彫り出された。あたかも野外ミュージアムの観を呈している。その奥壁中央に龍門最大のほとけが鎮座している。高さ17メートル強を誇る巨大な盧舎那仏である。(32ページ)

 

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龍門洞窟 - Wikipedia

宗教建築は世界観を具現化

有史依頼、建築はこころに抱かれた世界のイメージ、つまり世界観を現実世界において具現化してきました。世界観とは人が抱く世界のイメージだとすれば、幅・奥行・高さからなる3次元の空間であり、時間を含めれば四次元の空間です。ここで建築が3次元の存在であることが活きてきます。建築は実際にその中に入ることができますから、世界観つまり世界のイメージを示す格好の条件を備えているのです。(15ページ)

建物があるか、野外にあるか?

どうして我々は奈良の大仏の大きさに驚くか?武澤氏が指摘をする様に、建物の中に鎮座する事によってスケールが把握しやすいのであろう。一方奉先寺洞の大仏は建物を持たないが故に「野外ミュージアム」と例えた。

比較する事、視野に入れられること、

大きい、小さい、という場合必ず比較の対象となるものが必要である。日常の会話で比較の対象が省略されている場合人間の体が基準となっている事が多い。大仏はなぜこれほど(人間に比べて)巨大なのか?人間に比べて無限大の世界を表現する為に盧舎那仏を作った。それでは無限大を表現する為にどうして高さ16メートルになったか?もしかしたら人間が一つの視野に治められる大きさが16メートルなのかもしれない。

蛇足

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