毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間の心はどうやって生まれたか?~心は情動が記憶されたもの、身体心理学のアプローチより

動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書)

 春木氏は身体心理学が専攻、2011年刊。

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心は身体の動きから生まれた

脳という中枢の存在は、末梢である四肢の活動の経験の集積であって、末梢である身体なしに存在し得ない。大雑把な言い方になるが、はじめに「末梢での経験」があって、その経験を囲碁に状況で効率よく活かすために形成されてきた器官が脳なのだ。・・・脳は進化の後半から生まれたのであって、多くの動物は脳なしで十分に生きてきたし、生きている。・・・身体というと普通は物体や物質としての身体を考えやすいが、ここで重視するのは「動く身体」である。・・・「心は身体の動きから生まれた」とする考えを主張すると同時に、「心の始まりは感覚にある」とする考えも強調しておきたい。(5ページ)

回避条件付けの実験

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・シャトル箱は通過可能な様に仕切られ、片方の床は電気ショックを与える事が出来る

①ネズミをシャトル箱に入れ、しばらくして音(条件刺激)を与える。 数秒後に床に通電する(無条件刺激)→ネズミは飛び上がり逃れようとする(無条件反応)

 ②ネズミは偶然仕切りの反対に行くと、音も電気ショックも停止す る。

①~②を40-50回繰り返すと音がなっただけで反対側の部屋に移動する。音に反応して電気ショックを回避する行動が成立している。(回避条件づけ

回避条件付けの意味

回避条件付けの場合、条件反応は無条件刺激(電気ショック)が来ないように反応しており、しかもその反応はなかなか消去しない。(無条件刺激の電気ショックがないにも関わらず持続する)。・・・反応がおきる為には「動機」が必要であり、反応が消去しないで持続するためには、反応が動機を満足させる「よい結果(強化)」があることである。(37ページ)

音と逃避行動をつなぐもの、それが不安という動機

この場合、音に対する条件反応は「不安」と称される。この不安が逃避行動を起こす動機の役割を果たしているのである。・・・音と逃避行動の結合を媒介するのが不安(動機)なのである。(38ページ)

ネズミの心の形成

ネズミに最初から心があって、回避反応を引き起こしたのではなく、状況に対して動いた結果、心らしきものが形成されたということである。・・・回避条件付けの成立の為には、記憶を可能にする器官である脳の存在は不可欠であるかもしれないが、記憶の内容(心)は末梢の動きの経験なのである。環境に反応し動いた経験が脳に蓄積され、次の経験の能率を上げることができるのである。(39ページ)

我々の複雑な心は身体経験の蓄積により成立している

我々は生物進化の最後に誕生した。脳を持たない生物からヒトまでの経験の蓄積、一人の人間として誕生してからの経験の蓄積、これらによって多くの回避条件付けが刷り込まれているのかもしれない。生物としての人間は自動的に不安を生成し、不安の発生に関係なく回避行動を取る事で良い結果を得られる事になる。生物としての生存に効率的な対処方法であった事は間違いない。我々は今直接的生命の危機のあふれた環境には住んでいない。それでも不安を生成し、有りもしない生命の危機に怯えているだけかもしれない。

感情もまた生得的なもの

生まれながら目の見えない、つまり他人の笑った事を観た事のない少年の写真を載せてる。通常い意識的だと考える感情もまた生得的に兼ね備えたものだという事である。「笑いたいから笑う」のではなく、「笑うから笑いたくなる」のである。「笑う門には福来る」を身体心理学的に解釈してみる。自ら「笑い、喜び」という感情使った多くの「回避条件付け」を形成すると幸せになます、と解釈した。どうせなら不安より"愉しみ"を条件にした方がいい。

蛇足

心とは情動が記録されたもの

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