毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

黄金比がメジャーなのはネーミングの勝利?~書評「美しい顔」とはどんな顔か?

「美しい顔」とはどんな顔か: 自然物から人工物まで、美しい形を科学する (DOJIN選書)

著者は「芸術学部に所属する理学系教員として、アートと数学、サイエンスのコラボをめざす。」2013年9月発刊

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黄金比とは

黄金比(golden ratio)の近似値は1:1.618、約5:8。西洋では、黄金比(もしくは黄金比率)と呼ばれる比が美の印象と関係しているとされている。Wikiによれば「黄金比」という用語が文献上に初めて登場したのは1835年刊行のドイツの数学者マルティン・オームの著書『初等純粋数学』。

日本人は正方形~1:1.4の四角形を好む

現代欧米人と日本人の「美しい四角形」に対する感じ方はまったく異なることがわかります。つまり、黄金比付近の四角形を美しいと感じる欧米人とは異なり、黄金比を美しいと答えた日本人は僅か十数パーセント程度しかいないのです。日本人は黄金比の四角形をとくに好む訳ではないのです。それでは日本人はどんな四角形を美しいと感じるのでしょう?図から日本人は正方形を美しいと感じる、もしくは正方形~1:1.4(白銀比四角形)のように細長くない四角形を美しいと感じる傾向があることがわかります。(25ページ)

白銀比(1:1.4)

白銀比の身近な例はA版、B版で決められた紙の縦横比に使うA判は、19世紀末ドイツの物理学者オズワルドによって提案されたドイツの規格で、面積が1平方メートルの「ルート長方形」をA0と決定。A0→A1→A2→A3とそれぞれ半分の面積になる様になっている。

自然と美

黄金比も自然科学と関係しているのではないかという考えもあるかもしれません。しかしながら、標準的な大学の物理学のカリキュラムに黄金比は出てきません。その一方で黄金比は自然科学教育の中で、学生に興味をもたせるためなどの目的で活用される傾向があるようです。(143ページ)

 

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 白銀比 - 木全賢のデザイン相談室

キティちゃんと白銀比

白銀比の由来は木造建築の尺金(物差し)や貴金属比に関係すると言われるが、要は黄金比に対抗して命名された様だ。

著者はデザイナーの木全賢氏の「キティちゃんに白銀比が隠れている」の意見を紹介、「可愛らしい」を表現するには白銀比が適当と説明する。

キティちゃんのデザインにおいては白銀比の長方形が歴史的に使われてきた、という文化的習慣に由来するというのが一番妥当な解釈であろう。

蛇足

黄金比はネーミングの勝利

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