人生は予定調和的なはずがない~イタリアの道化師アルレッキーノに学ぶ
山口昌男は2013年没。本書は1969年発表、2007年岩波文庫にて発刊。
アルレッキーノ (Arlecchino)
イタリアの即興喜劇コメディア・デラルテ中のキャラクターの一つで、トリックスター。ひし形の模様のついた衣裳で全身を包み、ずる賢く、人気者として登場することが多い。国によっては、アルルカン(仏: Arlequin)、ハーレクイン(英: Harlequin)とも呼ばれる。)(wiki)
Commedia dell'arte : Truffaldino u Smeraldina Malta - YouTube
1600年頃のアルレッキーノ
彼の上着は膝に半分とどき、細かいずぼんをはき、衣装全体は不揃いのつぎで覆われている。足には黒靴を履き、木刀と皮の財布を腰に帯びている。頭にはソフトを被るが、明らかに野兎か、兎の尻っぽである飾りが帽子についている。顔半分は、黒い半仮面で覆われ、顎鬚と頬髭らしい剛毛のふちどりがされている。(106ページ)
人間の欠点を引き受ける存在
アルレッキーノは、人間の欠点とも考えられるものを一身に引き受けるのだ。ある文化のなかである時代に欠点と考えられるもの、ネガティブに扱われれている性格は、言い換えれば、人間がそこから阻害されている部分でもあるのだ。アルレッキーノはそれらを一身に引き受けることによって、文化の阻害された部分を「阿呆」「道化」という仮面のもとに外在化させる。つまり彼は、世の(文化の)穢れ(けがれ)を一身に引き受けるエスケープ・ゴートとしての機能をも帯びているのだ。(150ページ)
舞台の上の道化と恋愛小説
一見無意味にもみえる何の役割も持たないような者が出てきて、アクロバティックな変わった身振りをやったりして、舞台にもう一つの非日常の空間を作り出す。それは舞台全体の統一からいうと一種の危機であるかもしれない。・・・恋人に電話をしてふられそうになる。それだって一種の危機であるから、この危機を克服すうるために若者たちは必死になる。・・恋愛小説の場合には、そういう一種の危機の状況を引き起こして、それが克服される過程を描いてハッピー・エンドに終わる。(山口昌男「学問の春」182ページ)
人生は予定調和的ではない
アルレッキーノは人間の欠点を舞台にぶちまける。そこに筋書きに変化をもたらし、現実の世界の様な複雑さをもたらす。我々は日常は予定調和的である事が好い事だと決めつけているだけかもしれない。恋愛は間違いなく非日常であるが故に盛り上がる。そしてその恋愛はアルレッキーノの様な存在が必ず危機をもたらしてくれる。ハーと言っているアルレッキーノが表現する非日常が非日常という恋愛に輝きをもたらすのかもしれない。人生は予定調和的でないから愉しい。
蛇足
ハーレクイン小説の由来、「恋物語を語って聞 かせた『ハーレクイン』たち
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