毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ヒトは土器を何の為に使ったか?~農業と都市、そして料理を結びつけるもの

世界史を動かした「モノ」事典

道路、貿易船、紙、火薬、金・銀、レンズ、キャラコ、ジャガイモ、カンヅメ、ゴム…。現在はすっかり身近なモノにも、実は歴史を動かし、活躍してきた意外な“過去”がある。2002年刊

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料理革命

人類が考え出したあらゆる調理法は、①生、②加熱、③発酵に分類できるという。中でも「加熱」は摂取できる食物の種類を飛躍的に増やし、人類の食生活を一変させた。火を使うことにより食物の化学変化がうながされ、それまで食べられなかった多くの食材を食べられる状態に変え、「うま味」が引きだされる事になったのである。(14ページ)

最初の調理器具が土器、pot

人類は最初のうち、料理の際に、炉や灼熱した石を利用していたが、約9000年前に農業が始まり、穀物が栽培されるようににった頃から、粘土で形を変え、火で熱して食材を熱した水で煮る(煮沸する)ようになった。これにより固い穀物を柔らかくして食べるようになったからこそ、農業が始まったとも言える。・・・なお、「ポット」(pot)という言葉から壺の中で水とともに食物を煮る「ポタージュ」(potage)という言葉が派生している。(15ページ)

土器とは「粘土を化学変化させたもの」、別名セラミック

土器の出現はオーストラリアの考古学者ヴィア・ゴードン・チャイルドによれば「人類が物質の化学的変化を利用した最初のできごと」であり、物理的に石材を打ちかいてつくった石器とはまた異なる人類史的意義を有している。具体的には乾燥させた粘土を加熱すると、残った水分が蒸発した後、カオリナイトが還元され、573℃で石英の結晶が変形して全体が膨張する。更にカオリナイト以外のケイ酸塩の還元が進んだ後、冷却することで石英の収縮によって全体がしまって、強度が高められて、焼結が完了する。(Wiki

料理革命と土器を結びつける

縄文時代とは約16,500年前から約3,000年前、世界史では中石器時代ないし新石器時代に相当する。歴史の教科書の影響だろうか、縄文土器を装飾性の高いオブジェの様に認識してきた。土器の一番の目的は調理器具だと知るに至って料理革命の持つ意味が理解できる。本書の題は『世界史を動かした「モノ」事典』、その最初が土器を揚げるのもわかる。土器はヒトが食糧、特に穀物を、調理して食べる行動が形になったモノだったのである。料理革命、農業革命、都市革命、これらはすべて土器とつながっている事に気づく。

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左 1万4000年前の土器、豆粒文土器http://www.pref.nagasaki.jp/jiten/uploads13/3028-03.jpg

右 いわゆる縄文土器

蛇足

魔法瓶をポットというのは和製英語(英語ではThermos)