毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

警察の誕生 (集英社新書)  

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1829年英国で国家による警察が誕生

イギリスに内務省直属の公務員警察が生まれたのである。司法と行政が分離された。ロンドン市内の治安維持職は警察所長と警察判事に分離した。その警察署長の受け持ち区域はかつての無数にあった教区とは違った統一的な警察管区となる。中央集権的、官僚主義的警察システムができ、無給の巡査、夜警、私的警備印、夜回りが廃止された。代りに有給の統一的巡査隊が生まれた。巡査隊には征服が支給され、半ば軍事的組織となった。巡査は国家によって任命され、給料は内務大臣の許可で支給される。(181ページ)

国民警察~国家権力との分離

イギリス警察はその管掌事項を犯罪の防止と摘発、そして交通安全にほぼ限定することで不可視となった。それは逆に言えば警察が社会に浸透し自明性を獲得したことを意味する。こうしてイギリス社会の治安は功利的に保たれるようになった。(186ページ)

国民国家の制度疲労と今後の警察の変質の可能性

イギリス警察の市民警察の標榜に象徴的に現れるように、権力のあり処を不可視にすうrことで、より緻密に功利的に支配を貫いてきた近代国家、すなわち国民国家はヨーロッパで成立してからそろそろ200年になる。・・・(200年の制度疲労により)国民国家成立の最大の担保である国民相互の均質化が崩れてきれしまったのである。国民の間に鋭い亀裂が走り、同時に犯罪が複雑化してきた。このとき、不可視の道を進んできた警察は振り子の原理に則り、激しく可視化してくる。見えない警備から見える警備への転換である。逆に犯罪が不可視となってくる。・・・それは不可視の最大の犯罪であるテロに対する圧倒的警察規制の発動に現れる。例えばどこの国の国際空港も警察規制のオン・パレードとなっている。(188ページ)

自由と規制の狭間で、

我々にとって警察が司法と行政に分離しているのが常識であり、その前の状況は想像しがたい。良い時には功利主義が保たれ維持コストも安い。弊害から言えばすべてが恣意的になりチェック&バランスが聞かない。同様に警察の目的は治安の維持であって国家権力の維持を目的とする警察国家という概念を実感する事はない。著者は中世ヨーロッパ史の研究家、歴史は畝る、という様に自由と規制の狭間を動いてきた。同様の視線で考えると、現在の我々の世界が静的な姿であると考えるのには無理がある事がわかる。我々は脆弱な世界に生きているのだ。著者は「人は自由を求めて、ついに警察国家を組織するに至る」(ドフトエススキー)を引用する。

蛇足

おまわりさん、と呼べる事の幸せ。