毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

現実はバーチャルな世界だと気づく時~書評 「現実脱出論」 坂口 恭平氏

現実脱出論 (講談社現代新書)

 坂口氏は「独立国家のつくりかた」の著者。

 目に映っている現実は、決して唯一無二の世界じゃない!f:id:kocho-3:20140929083851p:plain

現実とは

広場のようなものだ。その広場は、ある規則に従って余分な情報をカットし、大多数で遊べるようにデータが軽量化された空間、つまりインターネット空間とも似ている。(36ページ)

現実は、集団が形成される時にうまくコミュニュケーションが行えるようにと、細部に少しずつ意図的な補正がほどこされた仮想の空間である。現実はリアルではなくバーチャルなのである。・・(集団としての)群れ全体が理解できるような知覚だけが重視され、それ以外の個々が持っている独自の感覚は削除されていった。・・・現実は無機質なものではなく、一つの生命体なのだ。(122ページ)

思考という巣

思考を続けていくと、目の前の現実を疑わざるを得なくなる。・・・人間は、現実という世界だけでは自由であると感じることができない。現実が仮想空間であることなって、もともと分かっている。だから現実を脱出すること(=思考)は、誰もが当然のようにやってきたことなのだ、と。・・・思考する動機があるかないかが問題なのではなく、空間を探し出し、自らの独自な空間をつくることが、生きることであり、思考そのものなのだ。(155ページ)

再び現実とは何か

個人による思考を、現実に直接作用させることはできない。ならばなぜ、現実が存在するのか。そこが他者と意思疎通する為の舞台だからだ。・・・現実という場においてのみ、意思疎通の可能性が残されている。(167ページ)

現実脱出論について

人はバーチャルな現実以外に、自己の五感に従った空間を持っている。自己の空間ではすべてが可能であるが一人ぼっちの世界。現実は他者がいるが様々な制約の存在する世界。自己の空間を現実に持ち込もうとする行為を自己表現あるいは創造と捉える。著者は幼年期から、独立国家設立のストーリーから、家庭での日常から、バーチャルな現実から脱出し自己の思考という空間に行き、そして現実に舞い戻る方法論を説明している。現実は皆が理解できる様に主に言語によってルール化されたバーチャルな世界ではあると気づく事からすべてが始まる。

蛇足

どうやったら自分の思考を現実に

 

伝えられるか考えてみる。

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