毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

フィルター・バブルという言葉を知っていますか?~私とあなたの検索結果が違う意味

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義

イーライ・パリサー: 1980年生まれ。アメリカ最大のリベラル系市民政治団体の1つ、「ムーブオン」(MoveOn.org)の元エグゼクティブ・ディレクターで、現在は理事会長。本書は2012年刊。

 

f:id:kocho-3:20140917083517p:plain

イーライ・パリザー:危険なインターネット上の「フィルターに囲まれた世界」 | Talk Video | TED.com

 フィルター・バブル

新しいインターネットの中核をなす基本コードはとてもシンプルだ、フィルターをインターネットにしかけ、あなたが好んでいるらしいもの-あなたが実際に使用したことやあなたのような人が好きなこと-を観察し、それをもとに推測する。これがいわゆる予測エンジンで、あなたがどういう人で何をしようとしているのか、また、次に何を望んでいるのかを常に推測し、推測の間違いを修正して精度を高めてゆく。このようなエンジンに囲まれると、我々はひとりずつ、自分だけの情報宇宙に包まれることになる。

著者はフィルター・バブルにより、①情報の場の中でひとりずつ孤立する、②フィルター・バブルは本人には見えない、③我々が選択したものではない、という問題点を指摘する。

ユーザーとユーザーの情報が最大のコンテンツ

昔のニューヨークタイムズはとても高い広告料が取れた。裕福でニュヨーク周辺に住み、ほかの人々に大きな影響を与える人々という上質な読者が集まっていると広告主が知っていたからだ。・・・高い料金を払ってニューヨークタイムズに広告を出向しなくても、今なら、アクシオムやブルーカイからデータを買えエリートコスモポリタンの読者を追跡できる。・・・上質な読者を得るために上質なコンテンツをつくらなければならなかった時代は終わろうとしている。・・・(広告収入は)データを持つ人々のところへ流れた。いま注目すべきはサイトではなく、ユーザーなのだ。・・・新聞社が自らを行動データ企業だと考えられなければ、新聞社は沈没する。そう考え、読者の嗜好に関する情報の提供をミッションとしなければ、つまり、パー粗なライズされたフィルター・バブルの世界に適応できなければ、新聞社は沈没する。

f:id:kocho-3:20140917083043p:plain
見たいものだけを見、知っている事を見る

パーソナライゼーションは、創造性やイノベーションを3つの面から妨げる。①まず我々が解法を探す範囲(解法範囲)がフィルター・バブルによって人工的に狭められる。②次にフィルター・バブル内の情報環境は、創造性を刺激する特質が欠けたものになりがちだ。③フィルター・バブルが取り除くように作られているランダムなアイデアセレンディップの可能性がなくなる。(116-118ページから再構成)

 

著者は以下を引用する。「その価値は、いくら強調しすぎても強調しすぎることはない・・・その価値とは、自分と異なる他人と接触する価値、自分がよく知らない考え方や行動と接触する価値である・・・そのようなコミュニュケーションは昔から進歩の一つになってきたものであり、現代においてはその傾向がさらに強まっている。」(JSミル 英の哲学者、功利主義を提唱)

フィルター・バブルは異なった考えを排除する事で創造性と発見のモチベーションを低下させる可能性があるという事である。

f:id:kocho-3:20140917084132p:plain

何を表示されるか、より何を表示されないか、の方が重要。

フィルター・バブルをgooleで検索したら、トラッキングしない検索エンジンが検索された。Escape your search engine Filter Bubble!

蛇足

新聞というメディアから検索エンジンに編集権が移った