毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間に攻撃性のあるウィルス、それは世界は強者の論理だけではない事の証明~ウィルスとの共生

破壊する創造者―ウイルスがヒトを進化させた

 

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 ミクロの微粒子が現代ダーウィニズムを書き換える。生命観を一変させる衝撃の書

 

 

動物とウィルスの相利共生と攻撃的共生

ヘルペスウィルスの中にも、サルの種を越えて感染すると毒性が強くなるものがあるようですね。・・・リスザル、クモザルという特定のサルとともに共進化してきたウィルスです。そしてどちらのウィルスも、別のサルに感染した場合、非常に致死率が高いのです。しかし通常の宿主であるリスザルやクモザルには何もしません。・・・ウィルスは、元々の宿主と生態学的地位が同じで、食べ物も同じ、というサルに対し、最も攻撃的になると思います。(114ページ)

攻撃的共生の効果

元々の宿主だった動物にとって利益になることは明らかですよね。良く似た動物は、食べ物などをめぐってライバルとなることが多いので、そういう動物が生態系の中に入ってきた時にウィルスが種を越えて感染し、侵入者を排除してくれれば利益になるはず、と考えられます。(113ページ)

進化の4つの推進力

私は、「進化は突然変異と自然選択によって起きる」という従来の考え方は「現代化」すべきだと信じている。進化生物学では、突然変異以外にも、「遺伝可能な変異」をもたらし得るメカニズムが幾つも見つかっているからだ。・・・突然変異とは、細胞分裂の際の遺伝子のコピーの「エラー」であり、この変異が進化にとって重要であることは今も変わらない。しかしその他にも、共生発生、異種交配、エピジェネティックな変異などが、真過剰、大きな役割を果たすことがわかっている。(403ページ)

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「進化の木」は複雑に絡み合い、輪郭のぼやけた1本の最も古い木

ダーウィンは同じノートに、動物、植物の簡単な系統図を描いた。その系統図は、まるでカシの大木のような姿になった。・・・(異種交配に加え)共生発生を考慮すれば進化の木の枝は、近くにあるものだけでなく、遠いところにある枝どうしも絡み合うことになってしまう。・・・そして今や生物学者、特に進化生物学者は、ウィルスの存在を無視することができなくなっている。ウィルスは、あらゆるところに存在して、様々な宿主と共生し、爆発的に数を増やすことができる。・・・進化の木は地球上に現存する最も古い木である。(406ページ)

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進化に対する見方を変える必要

ダーウィンの進化論は自由競争、強者の論理と結びついている。ウィルスは共生する事によって共生する動物のライバルを排除しようとしている。単純な強者の論理ではない。一方で4つの推進力が描く進化の木はより複雑で関連性のある世界である。だからこそ世界は多様性を保持している。

蛇足

ウィルスは人間といえども絶対的な強者では無い事を教えてくれる。