もしあなたが世界で一番美味しいものを探してきて、と言われたら?～イベリコ豚をめぐる冒険
野地/秩嘉氏～
1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。 幻の豚を追ってスペインへ!現地で明かされた驚くべき事実の数々…。4年にわたる徹底取材!傑作「食ノンフィクション」。
イベリコ豚とは？
イベリコ豚は、イベリア種100%純血、もしくはイベリア種とデュロック種を交配させた豚（イベリア種50%以上）のうち、スペイン政府が認証したものをイベリコ豚と言う。地中海地方に起源を持ち、主にイベリア半島の中央部から南部、スペイン西部からポルトガル東部にかけてみられる。ドングリを食べて育った最高級のイベリコ豚（全体の10パーセントほど）は「ベジョータ（bellota＝スペイン語で「どんぐり」）」と呼ばれ、どんぐり以外の普通の飼料を食べて育ったものは「セボ」と呼ばれる。（Ｗｉｋｉ）
イベリコ豚を買えばいい
イベリコ豚肩ロースなら、小売りで100グラム500より600円。・・・イベリコ豚は世界中のどこへ行っても、その国の豚よりは高い。しかし、それでも、欲しい人は買う。エルメスのケリーバッグが世界中でひっぱりだこになっているのと同じ理由で、稀少価値があり、しかも高品質のものは国境を越えて売ることはできる。・・・イベリコ豚を調べることは日本の畜産業の将来の方向を考えることに通ずると思った。・・・スペイン人にとっては、わたしがどれほど高邁な取材目的を持っていたにせよ、口蹄病が出た国の人間にはなるべく遠慮したかったに違いない。商売になるわけじゃなし・・・取材でなく、イベリコ豚を買えばいい。豚を買えば、私は取引相手である。商品の説明をしなくてはならないから、イベリコ豚を見せてくれるに違いない。（29ページ）
新製品完成
イベリコ豚のハムを作る仕事お通して、わたしは仕事ができる人とはすぐに連絡がつく人で、しかも、自分の考えに執着しない人間だと理解することができた。・・・仕事の本質とは、毎日やる事務連絡と結果の確認、そして参加者の情報レベルを統一することなのだ。・・・ハムという商品ができるまでには膨大な連絡と手間がかかっている。仕事の本質とは膨大なディテールの積み重ねなのだ。そして、膨大な手間をいかに短時間で形にして迅速にマーケットに投入できるかどうかが勝敗の分かれ目なのである。・・・仕事のジョン質とはアイデアや新製品を考えつくことではない。アイデアを製品にするために日々行う地味な作業とそれに関わる関係者の連絡、打ち合わせである。（198ページ）
なんで、イベリコ豚でスモークハムを作ったのか？
「イベリコ豚はスペイン人にとって欠かせないものなんだ。・・・２年間も放牧したベジョーダで生ハムを作り、最低でも5年間は熟成させる。そんな生ハムを作れるのはうちだけだ。・・・おいしい食品なんで世界中にあるんだ。生ハム業界で一番になったとしてもキャビアの一番には勝てないかもしれない。和食の一番には勝てないかもしれない。しかし、勝とうとしなけりゃいけない。おいしい食品を作るいは完璧でなければならないんだ。・・・お前は経営者として頑張れ、おいしい食品になるかどうかは最終的には経営者の魂だ。完璧なものを作れるかどうかは理屈じゃない。魂だ。・・・お前はジャーナリストではない。いまや同業者だ。」（246ページ）
本物である事
野地氏はジャーナリスト、ふとした切っ掛けでイベリコ豚に興味を持ち、4年にわたり追跡していく。取材のはずが自らイベリコ豚を買いつける、更にはイベリコ豚を使った新製品開発を行うことなる。野地氏は協力者を得てスモークハムを作り上げる。スペインにあるイベリコ豚の仕入先は5代に渡る伝統の会社、そこのオーナーから「お前は同業者だ」と言わしめた。本物を追求した者のみが持つ迫力が宿る。
蛇足
世界一おいしい食品は何か?
