毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界経済が動き始めた550年前に西欧が選んだJapan Coolは何だったか?

100のモノが語る世界の歴史〈3〉近代への道 (筑摩選書)

 物には固有の来歴がある。その痕跡を子細に見てゆくと、歴史の知られざる一面が現れる。大英博物館の所蔵する世界の至宝から精選された百点でたどる人類のあゆみ。

 

本書を取り上げるのは2回目

世界で一番有名な日本の絵はどうして有名になったか?~勝利の方程式 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

f:id:kocho-3:20140823052310p:plain

最初の世界経済(1450~1650年)

 

これらの数世紀は、ヨーロッパ人が初めて自分たちの大陸を遠く離れた場所まで乗り出してた時代だった。なかでも重要な意味を持っていたのは、西アフリカの海岸を南下してインド洋に達した航海と、大西洋の横断である。それによって誕生した海の帝国は海軍技術の大いなる発展によって実現し、最初のグローバル経済をもたらし、ヨーロッパからアメリカ大陸、中国、日本に至るまで、スペインのピース・オブ・エイトが通貨として使用された。

大英博物館の柿右衛門の象

大英博物館の象は1660年から1700年のあいだのいずれかの時期に、日本からヨーロッパへ送られた。ヨークシャテリアほどの大きさだが、要は長い鼻と木場があるので象だとわかる。それ以外の点ではかなり驚かされる。体は白い磁器で、美しい乳白色をしているが、その上に上絵の具で大胆に装飾されている。・・・耳をみればアジアゾウであることは間違いない。目は同じくらい間違いなく日本人の目である。この象を作った陶工が一度も見たことのない動物を想像していたことはほとんど疑いようがない。・・・これは柿右衛門という名の企業家兼陶工によって考案されたといわれる特別な様式で、日本での伝統的焼物の技法として、陶工の間で代々受け継がれてきたものだ。(127ページ)

f:id:kocho-3:20140823052351p:plain

British Museum - Pair of porcelain, Kakiemon, model elephants

象の意味する所

大英博物館の柿右衛門の象は17世紀の全世界の物語を語る。日本の職人は外界から遮断されていても、中国と朝鮮から拝借した技術を使って、インドの動物の置物をつくり、イギリスに住む買い手の好みに合わせることができたのであり、それがオランダ人によって、本当の意味で最初の世界規模の貿易会社を通じて仲介されたのである。これは、どの様にして世界の様々な大陸が、船と貿易によって初めて結びつけられた恒例だ。(133ページ)

 

大英博物館は世界の歴史を語る「100の物」に柿右衛門をなぜ選んだか?

柿右衛門の解説から西欧が世界経済をどう捉えているかがわかる、柿右衛門はそれを象徴するというストーリーによって選ばれたと考えられる。日本人だけに意味があるのではなく、世界経済の中で捉えているからこそ意味があるという事。柿右衛門が象徴した日本、そして現代の日本とつながるストーリーを構築する「大きな物語」は何か考えてみる。

蛇足

柿右衛門の象は本物を見ないで創られた。写実ではないという事。