毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ヒトゲノムのうちウィルスとの関係があるものが46%~人間も、そして地球もウィルスで溢れている

 

ウイルスと地球生命 (岩波科学ライブラリー)

 山内氏はウィルスの研究者。 「あなたが胎児だったとき、ウイルスに守られていた? ウイルスといえば、病気を起こす危険なものとみなされている。ところが最近になって、生物の行動や生命の進化にウイルスがいくつもの重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。」

 

f:id:kocho-3:20140728074623p:plain

19ページ 大腸菌に感染するウィルスの本体はDNA

 

ウイルス(Wiki)

他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。生命の最小単位である細胞をもたないので、非生物とされることもある。

 

1952年リンと硫黄でマーキングした実験でウィルスの本体の構造が明らかに

(細菌に感染するウィルスである)ファージが大腸菌内に侵入するとリンによってマーキングされたDNAがそこに注入され、硫黄によってマーキングされたたんぱく質大腸菌の表面に残ったままで、ファージが増殖していた事が明らかになった。ウィルスの遺伝情報の担い手はDNAであってタンパク質はそれを保護していた事になる。この実験の結果が基になって、ウィルスはDNAまたはRNAのいずれかの核酸を持っていて、寄生する細胞の代謝機能を利用して増殖することが証明され、ウィルスは細菌とはまったく異なる存在ということが明らかになった。(20ページから再構成)

 人の進化を推進したウィルス

遺伝子は親から子へ垂直に移動するものだが、(DNAに働きかける)レトロウィルスの遺伝子は感染で取り込まれる事により生物の間を水平に移動する。こうして取り込まれたウィルス遺伝子が新たに生物の遺伝子になる可能性があることから、ウィルスと生物の長い共生の歴史の中でウィルスが生物の進化の推進に働いてきたのではないかというのがその考えである。(67ページ)

 

 

 

ヒトゲノムのうちウィルスが持ちこんだ可能性がある遺伝子は全体の46%を占める。

 f:id:kocho-3:20140728074128p:plain67ページより整理の上再構成

 

地球はウィルスで溢れている

あらゆる生物にウィルスは感染する、地球上の多様な生物の中にはどれ位のウィルスが存在しているのだろうか?国際ウィルス分類委員会の第8回報告(2005年)によれば、動物ウィルス、植物ウィルス、ファージすべてをあわせて約5400種のウィルスが確認されている。そのほとんどは陸上生物に感染するウィルスであって動物ウィルスが大部分を占める。(中略)我々が知っているウィルスは、地球上に存在する膨大な種類のウィルスのほんの一部に過ぎないのである。(88ページ)

 

ヒトゲノムの中だけでもウィルス由来のものは半分近くに達する。ウィルスは細胞の外では単なる物質であるが、細胞の中では、自主性を持った生物として振る舞う。ウィルスをNASAの地球外生命の定義「ダーウィン進化が可能な自己保存的な化学系」に当てはめれば生物には該当しないが、生物の細胞の中には数多くのウィルスが共生して生物として振る舞っている。ウィルスは地球生命圏で役割を果たしているという事である。

蛇足

ウィルスもまた地球の一部。