顔の「しわ」は感情にまつわる情報ネットワークがビジュアライズされたものだった!
P122皮膚細胞が微弱電流により情報を伝達
トーマスマンの「魔の山」を引用~著者の20年来の研究を表現
皮膚というものはつまりあなたの外脳です。よろしいかな、個体発生的には、あなたの頭蓋骨の中にあるいわゆる高等器官の装置とまったく同じ起源を持つものなのです。中枢神経組織は表皮層が少し変形したものにすぎません。そして下等動物にあたっては、中枢と末梢との間に総じて区別が無いので、連中は皮膚で嗅いでみたり、味わったりするのです。感覚といったら、皮膚感覚しかないのです。―考えてみただけでも快適ですなあ。これに反して、あなたとか私とかのような、非常に高度に分化した生物にあっては、皮膚の功名心はくすぐがったがるぐらいのところで抑えられていて、保護と伝達の器官というにすぎませんが、しかし肉体に近づこうとするあらゆるものに対しては恐ろしく警戒厳重です。
しわを伸ばす施術「ボトックス」(製品名 米国Allergan製)
しわの原因はいくつか考えられますが、眉間のしわなどは、顔面の筋肉に由来する場合があります。この緊張をゆるめるために、ボツリヌス菌毒素(以下BTX-A)の薄い溶液を皮膚に注射するというのです。BTX―Aは、時には命にかかわる食中毒の原因にもなりますが、それは毒素が筋肉の収縮に寄与するアセチルコリンという神経伝達物質が神経細胞から放出されるのを阻害して、全身の筋肉を弛緩させてしまうため、呼吸器や循環器に障害をあたるからなのです、しかし、この毒素の筋肉の修練をゆるめる役割に注目し、全身に影響が及ばない程度に用いると、筋肉の緊張によってもたらされたしわが伸びるという効果が得られます。
BTX-Aの心理的効果
BTX-Aはしわが伸びる事によって自分の見かけが変わったという認識がプラスの心理的効果を持つ以上のメカニズムがあると考えられている。
BTX―Aを注射した群では怒りの表情を作るように言われた時、左脳の扁桃体やそれに連動する脳幹部の変化が、比較群に対して、抑えられているということが確認されました。扁桃体は情動に関与すると考えられています、怒りの表情を作れなくなると、脳の中で情動を司る部分の活動が低くなったのです。これは日本では「顔面フィードバック」などと呼ばれる現象に関係していると考えられます。自分の顔の表情が、その感情を誘発する、つまり怒りの表情を作ると、怒りの感情が誘発されるという現象で説明できると研究者たちは述べています。
笑うから楽しい、怒るから怒る、悲しいから泣く、表情が情動を揺り動かし、そしてそれがしわを作る。顔のしわは「外脳」のネットワークが刻まれたもの=情報処理システムがビジュアライズされた物と思えてきた。赤ちゃんの顔にはしわが少ない。それは感情と外脳のリンクが未だ出来ていない事に例えられる。ボトックスはそのしわと同時にいらない記憶を一旦(2-3カ月)初期化するのと似た効果があると考えた。
蛇足
人にとって不必要な記憶とはあるものだろうか?