毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

1914年のヨーロッパ、素晴しい天気の夏だった~ちょうど100年前の7月第一次世界大戦が始まる

1914年: 100年前から今を考える (平凡社新書)

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1914年、第一次世界大戦が始まった

「1914年の夏は、それがヨーロッパの土の上にもたらしたあの禍がなくても、同じように我々にとって忘れえぬ夏であったろう。というのは、私はこの夏ほど豊かな感じで、美しい、そしてほとんどこういいたいのだが、夏らしい夏を体験したことは稀だったからである。(ツヴァイク「昨日の世界」)

(中略)

6月28日、サラエボオーストリア皇太子フランツ・フェルディナントがボスニア民族主義者に暗殺された。しかし、ほとんどの人々はまさか戦争になるとは思っていなかった。「何人も、国民も、政府も欲しなかった戦争とツヴァイクは言っている。はじめは人々はおどろき、とまどったが、それは直ぐに熱狂に変わる。愛国主義者の熱狂が国民をとらえる。平和に時はばらばらだった人々は一つになったかの様に感じられた。(18ページより再構成)

望まない戦争の拡大~わずか1週間で世界大戦へ拡大

7月28日オーストラリアはセルビアに宣戦布告、

7月30日ロシアは動員令を発令

8月1日ドイツはロシアに宣戦布告

8月3日ドイツはフランスに宣戦布告

戦争が始まった原因は?

海野氏は「100年前の第一次世界大戦を振り返って驚かされるのは、その原因、なぜ起こったかが確定していないことだ。(中略)第一次世界大戦の原因は過去のものではなく、今も生きた問題なのである。」(44ページ)と記す。

 

 

海野氏は1914年という時代を俯瞰する為に本書Ⅱで6つの項目を挙げている。これに加え私が現在へのインパクトの大きな項目を整理してみた。

①少女趣味の時代~宝塚少女歌劇の誕生

  1914年第一回公園、→現代につながる(少女趣味は大人の女へのおそれが内在)

ジェンダーとセックス~女性の出発 

       1910年代英国のミリタント(戦闘的)婦人参政権運動→1918年3英国で30歳以上 

      の女性に参政権

③モダン・アートの革命~光と闇

  1907年 ピカソ「アヴィニヨンの娘たち」

      それまでは産業革命の反動としてアールヌーボー様式が好まれた

④世界は曲がりはじめた~相対性理論量子論

      1904 フレミング真空管完成→無線、そしてエレクトロニクス産業へ

      1905    アインシュタインによる相対性理論と光量子仮説

⑤生命と遺伝子~人間とは何か 

      1909   英生物学者ベイトソンメンデルを再発見、「遺伝学」を提唱

⑥メディアが若かった時~大衆文化の神話時代

    1912  タイタニックがSOS発信、無線の確立へ

                   →第一次世界大戦は新聞・通信の発達

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アヴィニョンの娘たち ピカソ絵画の解説ばら色の時代の明るい雰囲気を受け継ぎつつ、伝統的な西洋画のセオリーを否定し後にキュビズムとして発展していく原点的な作品。
私が現在の社会に100年前を見出した事、技術変化を中心に列挙してみる

       1901  ベンツによるガソリン自動車の確立

      1903   ライト兄弟飛行成功

      1903   ハーバー・ボッシュアンモニア合成法確立

 

現代社会の枠組みの多くは100年前の影響を想像以上に残している。第一次世界大戦はわずか1週間で始まった。今同じ事が想定できない様に、100年前も皆想定していなかった。世の中には現在に至るまで100年の時間をかえても解決できていない問題がある。

蛇足

自分の仕事、社会の100年前と今の連続線を探してみる。