毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

もし時計から分針が無かったら、と想像してみる~時間もまた主観的な概念である

1秒って誰が決めるの?: 日時計から光格子時計まで (ちくまプリマー新書)

安田氏は産業総合技術研究所、次世代原子時計の研究者

時代と共に1秒の定義も変化している。1秒を計る技術の最前線に迫る。(2014年6月刊)

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原子時計の仕組み、原子の振動を図る事(119ページ)

 
1657年、振り子時計が分の精度を実現

1583年「ガリレオが振り子の等時性」を発見、これが1657年オランダのホイヘンスの振り子時計製作につながる。振り子という一定の周波数を持つものを1時間にあてはめた時「分」という長さが決まった。

「振り子時計が出来て時計の精度は格段に上がり、誤差は1日10分程度までに縮まりました。(中略)その頃から、時計の針が二つになりました。一つ目の針は、日時計における影の動きに相当します。北半球で時計の針が右回りなのは、日時計の影の動きに由来しているからです。二つ目の針は、分針です。時計の精度の向上に伴い、1時間を60に割った分(miniute)という単位が出来ました。ようやく、1分間、分という概念ができた訳です。「ミニット」は小さいという意味です。(29ページ)

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針はまだ1本、重力を重りを経由して振り子の振動に変換振り子時計 - Wikipedia

秒(Second minute)の誕生

更に時計の精度が上がると、1分という時間も、もっと細かく訳たくなってきますね。それが「秒」です。もとは「Second minute」つまり「第二の分」と呼ばれていましたが、そこからミニットが抜け落ちて、ただの「セカンド」=秒になりました。(30ページ)

一秒間に何回振動するか?周波数の高さが精度の鍵

周波数を数える事で計測される時間も一定になります。振り子が一定であれば時間を正確に計れ、振動の速度が速くなり、一秒を分割する度合いが細かくなるほど時計の精度は上がる、というわけです。時計の進化の歴史は、より細かい一定の振動を求めてきた歴史だという事が出来ます。(84ページ)

1秒の定義は、地球の自転、地球の公転、そして1967年セシウム原子時計へと変遷

1967年以来、セシウム原子にマイクロ波を照射して周波数92億HZ(回/秒)の振動を利用したセシウム原子時計が現在の1秒の定義になっている。そして更に固有周波数の高い物質を利用する事が検討されている。その一つが安田氏の研究「イッテルビウムイオン光格子時計」であり周波数518兆HZ(回/秒)!を誇る。安田氏はこの光格子時計を「原子本来の色を見る」と表現している。基盤技術の向上によって原子単位の色を識別できる様になったという事である。

産総研:イッテルビウム光格子時計が新しい秒の定義の候補に

 

時間計測能力向上とパラダイムシフト

精度の高い振り子時計の発明がケプラー法則やニュートン力学、そしてその後のパラダイムシフトにつながった。同様に精度向上が次の今は予期せぬパラダイムシフトにつながる事は確かである。我々は原子単位の、そして将来は原子核の色を識別できる世界に住んでいる。

蛇足

時計から分針が無い事を想定してみる、結論は「時の長さ」は主観的。