毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

イネは一年草か多年草か?~田植えを行う理由から答えが明らかになる。

おいしい穀物の科学 (ブルーバックス)

 

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穀物の生育は水分と温度の4象限にわかれる。

  

植物としてのイネの起源~アジアのモンスーン地帯の多年草!

イネは、エールハルタ亜種(イネ科)の中から栽培化されたものである。その起源は、東アジアのモンスーン地帯の湿潤な場所に適応した多年草の野生イネである。

 

野生種のイネと栽培されるイネ

 食料になる部分の重量と生物学的な 重量の比を「収穫指数」といい、作物生産の効率を示す指標の一つである。収穫指数が大きくなると、土地面積あたりの収量も大きくなる。イネの野生種は、湿潤なアジアの湿地に適応したものだが、収穫指数が小さい。(43ページ)

 

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 イネの野生種

サトウキビの様に茎を土壌にさせば繁殖する。その為に茎葉部などの栄養体へ重点的に栄養を配分する。栄養部の成長は大きくなるので多年生の性質が強くなり、収穫指数は小さくなる。

イネ栽培

現在のイネの栽培種は、同化産物が種子に重点配分されるので収量は増えたが、一方で栄養成長率は小さく、一年生的な性質が強

 

イネの栽培種は雑草に弱い、それを補完するのが田植え

イネの栽培種は収穫指数が大きいので、ヒトには有利である。しかし、茎葉部が小さく再生力も小さいので雑草などの他種と競争力が低下する。(中略)イネの栽培種には多年生の性質も残っていて、水がある所に刺すと枯死せずに増殖する優れた性質を持っている。数枚の葉を持ったイネを「移植」すればその時点でまだ発芽していない他種(雑草)とは大きな成長量の差がついている。そのため、イネは光をめぐる他種との競争に勝てる。つまり田植えとは「移植」であり、夏の雑草に勝つための合理性を持つ栽培法なのである。(44ページ)

 

 

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田植えは移植であり雑草との競争に勝つ為田植え日記 | SANCTUARY Red Eagle

 

イネは多年草であり、田植えは移植。東アジアの気候と人々の努力と経験が栽培方法を洗練させていった。日本ではイネは一年草として育てられていから一年草と思い込んでいる

蛇足

穀物は水分と気温という気候に左右、長期的に見ればエネルギー多消費型穀物栽培は限界がある。