毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうしてイギリス人はお茶に砂糖を入れるか?

 砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)川北氏は西洋史の研究家、茶や綿織物とならぶ「世界商品」砂糖に注目する。

砂糖と砂糖きびの始まり~Wikiより

 

砂糖の生産は、まずサトウキビを利用して始まった。砂糖きびの原産地は、インドネシアと考えられる。紀元前2000年ごろにインドで砂糖が使われており、サトウキビから砂糖を作ったのは、インドが最古である。インドの砂糖や砂糖きびは、アラビア人によってペルシャ・エジプト・中国などへと伝えられた。ヨーロッパには、11世紀に十字軍が持ち帰り、地中海周辺でサトウキビが栽培されるようになった。16世紀以降ヨーロッパから新大陸にプランテーションで生産する「世界商品」として持ち込まれ大量生産される。

 

どうしてイギリス人は紅茶に砂糖を入れたか?

 

イギリス人は、なぜお茶に砂糖をいれるという、とんでもないことを考えたのでしょうか?(17世紀に入ると)アジアやアメリカ、アフリカなどの珍しい商品が輸入され始めましたから、貴族やジェントルマン、豊かな商人たちは、競ってこうした「舶来品」を使っていたのです。外国からきたもの、とくにアジアやアメリカからきたものは、高価だっただけけに、何でも「ステイタス・シンボル」になりやすかったのです。(中略)紅茶に砂糖を入れれば二重の効果が期待できるわけで、これはもう文句なしの「ステイタス・シンボル」になったはずなのです。(78ページより再編集)

 

砂糖入りの紅茶を支えたもの~世界的な貿易システム

 

筆者は18世紀のイギリス人歴史家の言葉を引用する。「我々イギリス人は、世界の商業・金融上、極めて有利な地位にいるために、地球上の東の端から持ち込まれた茶に、西の端のカリブ海からもたらせる砂糖を入れて飲むとしても(それぞれに船賃も保険料もかかるのだが、)なお、国産のビールより安上がりになっているのだ。」(中略)「お茶に砂糖を入れる」という破天荒な思いつきはこのような幸福な立場にいたイギリス人にしかできなかった事なのです。

 

コーヒー・茶・チョコレートをめぐる一枚の絵

f:id:kocho-3:20140406075244p:plain(112ページ)

17世紀に描かれたものですが、アラビア仁と中国人とアメリカの先住民、つまり「インディオ」が登場しています。それぞれに、コーヒー、茶、チョコレートの容器がそばにおかれ、各人はそれぞれの飲み物にあったカップを持っています。つまり、この時代に急速にヨーロッパに広がった三種類のエキゾチックな飲み物(大量の砂糖が使われている)の産地を人間の形で表現している訳です。(114ページから再構成)

コーヒーもカカオも、そしてお茶も砂糖をいれなくてはいけない理由はどこにもない。当たり前の事にこの絵は気づかせてくれる。

 

蛇足

お茶と砂糖、マーケティング戦略とすれば素晴しい!