毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

キノコと石炭の関係~生物の地球史に加えるキノコの視点

キノコの教え (岩波新書)  小川氏は菌類学の研究家。著者はまえがきで「地球上の生物界は大きくて華やかな動植物だけのものではない。」 と書く。菌類のキノコが無かった時代はどんな時代だったか? 

石炭は植物の化石、古い時代(石炭紀34500万年前)のものほど良質

石炭の元は、石炭紀に繁殖したフウインボク、リンボク、ロボクといったシダ植物の大木である。埋もれた時代が古ければふるいほど、良質の石炭になり、その産出量も多い。不思議なことに、慣例化が進んだ第四期(250万年前以降)に入ってからは、亜炭や泥炭以外石炭らしいものがない。現在の地球上で大量の木材が自然にたまっているのを見ることもない。なぜこれほど大量の木材が燃えもせず、地中にたまって石炭化したのだろう。

石炭紀の植物

陸上植物の祖先はシルル期のころに生まれ、その次のデボン期には湿地帯に群落を作っていた。化学成分も構造も単純だった植物体は、水辺に育つと菌や動物の餌のなりやすいので根を発達させて、水から離れて生きるようになった。陸に上がった植物は、強い紫外線や感想、微生物や動物の攻撃などから身を守るために防御装置を発達させ、しだいに強く高く育っていった。そのためには外側を厚い樹皮で覆い、セルロースをリグニンで固める必要があった。デボン期から石炭紀にかけて現れた大型の植物の多くは、樹木のような大木になり、ウロコなどに似た模様のある硬い樹皮で包まれている。

 

石炭紀の菌類、そしてキノコ

一方石炭紀の植物化石に菌類が見られることから、菌類も、早くから寄生していたとされているが、キノコの化石は見つかっていない。子嚢菌の原始的なグループはいたはずだが、木材を分解していたようには見えない。担子菌が現れるまでは、子嚢菌の天下だったと思われるが、このグループはリグニンをほとんど消化できないのである。そのため、枯れた木は腐らないまま倒れて積み重なっていったのだろう。担子菌が増え始めたのは、針葉樹の球果類が現れるジュラ紀のころと思われるので、恐竜がでてきたころから、ようやくキノコが木材を完全分解できるようになったのだろう。

植物とも動物とも異なる菌類を加えて生物の変遷

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キノコはジュラ期から増える。(巻末資料)

蛇足

キノコの由来は「木の子」。この表現は生物の分類からは誤り、キノコは植物ではない。