毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

産業革命と明治維新を結ぶ一冊のビジネス書スマイルズ「自助論」

 明治の人物誌 (新潮文庫)SF短編で著名な星新一氏が、父、星一の生涯の伝記。

 中村正直によって翻訳された自助論は「学問のすすめ」と並ぶ明治期のベストセラー、星一氏が愛読していた。星新一氏の父は苦学して米国コロンビア大学を卒業、帰国後製薬会社を興し成功する。

自助論の時代、イギリスは産業革命による繁栄にいた

自助論のなかに出てきた、ジョージ・スティーブンソンが蒸気機関車を試作したのが1814年、現実に鉄道として利用され始めたのが、その十一年後である。一方紡績工場は各地につくられ、ニューヨークとリバプール間に蒸気船が就航していた。すなわちスマイルズはその発展期に生まれ、成長したのだ。イギリスは世界各地の植民地を巧妙に支配し、資源を持ち込み、工業によって製品を作り、たちおくれているヨーロッパ諸国に売り込む。1837年にはビクトリア女王が王位についた。イギリスはさらに充実し、発展し続ける。人口、工場、鉄道、貿易、船舶、ありとあらゆるものはふえつつある。(29ページ)

スマイルズは時代の最先端企業、鉄道会社に勤めながら自助論(1854年)を執筆

彼はまず、蒸気機関の出現について語った。「ジョージ・スティーブンソンは炭鉱夫の子だった。父とともに働きながら、石炭を運ぶjトロッコにワットの蒸気機関をとりけてたらと思いつき、蒸気機関車なるものを作り上げた。」自助論は成功への心構えが書かれているばかりではなく、科学ん発達史にもなっている、分かりやすく具体的な例が挙げられ、人間味あふれるエピソードが加わっているので親しみやすい読み物でもあったのだ。イギリスですでに現実のものとなってりう来るべき産業革命への心構えの書となったいた。(23ページ)

イギリス留学から帰国した中村正直が1868年(明治4年)「西国立志編」として翻訳

本書の著者、星新一氏は以下の様に評する。

文明は魔法とは違う。人間によって合理的に作り上げられたもの。身分の違いなど、なにかをやる障害にはならない。もし、この(明治維新という)転換期にこの本がでなかったら。維新と開国をやってはみたものの、その後どうしたらいいかもわからず、大部分の日本人は気の抜けたようになり、取り返しのつかない空白の磁器を持っただろう。明治以後の近代化の歩みの引き金になったが、この)「西国立志編」だと言ってもいいと思う。これがなかったら産業がつぎつぎと生まれたかどうか。(36ページ)

 

中村正直氏はイギリス留学する若者の引率としてイギリスに渡り、帰国にあたりスマイルズの「自助論」を渡され翻訳を決意、星新一氏は「自助論を日本語に翻訳する為に天がこの世に出現させた人物」という。

蛇足

明治維新でイギリスから輸入した最大のものは「自助」の精神