今につながる情報伝達メディアはいつどこで始まったか?~520年前のドイツ
ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生 (集英社新書)
近代
1490年にマクシミリアン一世とタクシス家が郵便契約を締結
ハプスブルグ家の新領地ネーデルランドのリエージュ(現ベルギー東部)からローマまで40日で情報が到来した。南ドイツの大商都アウグスブルグとべネティア間が11日、ニュンベルグとヴェネティア間が14日で往復できた。ハプスブルグ家の領地拡大とスピードがマッチした郵便制度が成立したのである。この1490年を近代郵便制度元年とする一つの定説が出来上がった。
最初の情報伝達メディアは郵便制度
コミュニュケーション、すなわち、情報の分布とその内容の通知は、蓄積メディアとは別の伝達メディアによって行われるという事だ。近代郵便により、今までの時間と空間の座標軸を動かしたことが、16世紀ヨーロッパの社会変革であった。18世紀の国際法学者ヨハン・ヤーコブ・モーザーは、近代郵便精度とは空間と時間の座標軸を移動させたものであり、それはコロンブスの新大陸発見に匹敵する大事業だと指摘した。
(ベーリンガーの「メリュキュールの標のもとに」を引用して)後に陸路と現れる鉄道、高速道路網、空路網、電話、ラジオ、テレビ、インターネット、ケーブルテレビ、というメディアは、構造的にその組織的細部に至るまで、この郵便という近代初期メディアにさかのぼることができる。近代初期の、コミュニュケーション制度の「非物質的遺産」がヨーロッパの時間・空間的概念に対し決定的な影響を与え、ヨーロッパ文化の近代化を根本から促進させた。そしてこの近代化は、グローバリゼーションの波に乗って、あらゆる文明諸国に取り入れられたのだ。(213ページより再構成)
蛇足
ハプスブルク帝国の遺産「グローバル帝国のコンセプト」が今日のグローバリゼーションのスタート