毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今につながる情報伝達メディアはいつどこで始まったか?~520年前のドイツ

 ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生 (集英社新書)

 
菊地氏はオーストリア文学の研究家「十六世紀、神聖ローマ皇帝マクシミリアン一世により整備されたヨーロッパ郵便網は、ハプスブルク家の世界帝国志向がもたらした情報伝達メディアであった。皇帝からその郵便制度創設を命じられたタクシス家はじめ商人たちもこの情報インフラにこぞって群がっていった。」

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ヨーロッパ郵便事業500年を記念し、タクシス郵便がマクシミリアン皇帝の郵便を運ぶ様を描いた1990年発行のドイツ切手。小型印はマクシミリアン一世。トゥルン・ウント・タクシス

 

近代
1490年にマクシミリアン一世とタクシス家が郵便契約を締結

ハプスブルグ家の新領地ネーデルランドのリエージュ(現ベルギー東部)からローマまで40日で情報が到来した。南ドイツの大商都アウグスブルグとべネティア間が11日、ニュンベルグとヴェネティア間が14日で往復できた。ハプスブルグ家の領地拡大とスピードがマッチした郵便制度が成立したのである。この1490年を近代郵便制度元年とする一つの定説が出来上がった。

ハプスブルク家 - Wikipedia

 
最初の情報伝達メディアは郵便制度

コミュニュケーション、すなわち、情報の分布とその内容の通知は、蓄積メディアとは別の伝達メディアによって行われるという事だ。近代郵便により、今までの時間と空間の座標軸を動かしたことが、16世紀ヨーロッパの社会変革であった。18世紀の国際法学者ヨハン・ヤーコブ・モーザーは、近代郵便精度とは空間と時間の座標軸を移動させたものであり、それはコロンブスの新大陸発見に匹敵する大事業だと指摘した。

(ベーリンガーの「メリュキュールの標のもとに」を引用して)後に陸路と現れる鉄道、高速道路網、空路網、電話、ラジオ、テレビ、インターネット、ケーブルテレビ、というメディアは、構造的にその組織的細部に至るまで、この郵便という近代初期メディアにさかのぼることができる。近代初期の、コミュニュケーション制度の「非物質的遺産」がヨーロッパの時間・空間的概念に対し決定的な影響を与え、ヨーロッパ文化の近代化を根本から促進させた。そしてこの近代化は、グローバリゼーションの波に乗って、あらゆる文明諸国に取り入れられたのだ。(213ページより再構成)

蛇足

ハプスブルク帝国の遺産「グローバル帝国のコンセプト」が今日のグローバリゼーションのスタート