毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

恐竜が2億年にわたって与えていた環境負荷~それも自然のメカニズム

 鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー) 川上氏は現生(!)恐竜生態学者。

 

 

恐竜は、間違いなく中生代の地球に君臨する王者であった。個々の体の大きさ故に、生態系に占める彼らの生物量は相当に大きかったはずだ。恐竜の存在は、地球にどのような影響を及ぼしたか?

 

植食恐竜の採食圧力~ミクロの影響

全長35メートルにも達したディプリドクスを含む竜脚類は、植物食の代表格である。体重は40トンとも見積もられる。鳥脚類も基本的に植物食者だ。これらは比較的小柄で、大型とされるハドロサウルスでも体長10メートル程度だ。小型と言っても、10メートルといえば十分大きい。なにしろアフリカゾウでも6メートル程度である。

体長5トン程度のアフリカ象で、一日に100キロ以上の食物を食べる。大型の竜脚類や鳥盤類は、それと同等かそれ以上の食物を食べていただろう。植食恐竜は、その体の大きさゆえに、生きるために食べるだけで、環境に大きな影響を与えていたのである。そのことにより植物は進化し、森林構造は変化し、その空間に適用した動物が進化したはずである。(230ページ)

メタンガスの発生~マクロの影響

竜脚類の排出するゲップによるメタンガスの発生量を見積もったものがある。現生動物のメタンガス発生量や、恐竜の体重などから推定した計算では、竜脚類全体が発生させるメタンガスは、年間5億トンを超える。これは現代のメタンガス発生量全体に匹敵する。メタンは、温室硬貨を促進する主因となっているガスだ。ウシやヒツジなどの反芻動物は、植物の分解仮定で、体内にメタンを発生させる。これをゲップなどにより対外の排出するのだ。この効果は、発生源全体の10-20%程度を占めているとされている。巨大植食者から発生したガスの影響は、世界的な温暖化をもたらした可能性がある。(232ページ)

恐竜のゲップが地球を温暖化した?

ニュース - 古代の世界 - 恐竜のゲップが地球を温暖化した?(拡大写真) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ

中生代は動物の移動スピードが上昇

巨大な体躯をもつ恐竜の通り道となると、森林や農道を貫くちょっとした県道ぐらいのものがあったとしても、おかしくない。こうしてできた恐竜道は、誰にとっても歩きやすい道になっていたはずだ。肉食恐竜だって、哺乳類だって、通りやすい場所を通っていただろう。(238ページ)

生態系エンジニア

大規模に環境を改変させる能力を持つようになった生物を「生態系エンジニア」と呼ぶ。当時の生態系の中で優占種となった恐竜たちは、エンジニアとして多様な環境を作り 、そこに依存する生物の進化を促す重要な役割を担っていたはずだ。(239ページ)

 

現在の優占種であるヒト、恐竜と同じように環境負荷が発生している。恐竜の時代は約2億年、地学的スケールでみれば恐竜が与えた環境負荷の方がもっと大きいはずである。優占種の環境負荷がある1点を捉えれば最大になるが地学的スケールで見ると一瞬であり、人類が環境負荷により地球の生態系を破壊する、というのは感情に訴えている面が大きい。

 

蛇足

恐竜のゲップ、想像したくない。