毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

「ぞうさん」の歌詞が説明すること~DNAの本質は関係性を示す情報

まど・みちおさん死去、戦後代表する童謡詩人104歳 (カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース

ぞうさんの作詩で知られるまど・みちおさんが亡くなられた。 科学者が人間であること (岩波新書)

中村氏はJT生命誌研究館館長、「ぞうさん」で分子生物学の意義を説明する。

 

ぞうさん、ぞうさん、おはながながいのね♪

そうよ、かあさんもながいのよ♪

ぞうさん、ぞうさん、だれがすきなの♪

あのね、かあさんがすきなのよ♪

 

DNAとは

DNAはATGCという四種類の物質の並び方によって、どんなタンパク質を、いつ、どれだけつくるかという情報を伝えるものです。生命誌から見ると、すべての生き物の中に存在する貴重な生命の歴史の記録書です。つまり、それぞれの生き物の歴史を読み解こうとする時の基本は、ゲノムの記録を読み解くことになります。(32ページ)

ゲノムとは関係性を記録したもの

ゲノムとは一つの細胞の中にあるDNA全体をさします。その性質を一言で表現するなら関係性でしょう。遺伝子と遺伝子、細胞間、さらにはある生物と他の生物との「関係性」「ネットワーク」を内に持つものと捉えることができます。(53ページ)

DNAはすべての生物を一つの土俵=関係性で語る

DNAというとまず「遺伝子」として、ある性質を決めてしまうものとしてのみ受けとめられがちですが、生物学においてDNAが重要だったポイントはそこではありませんでした。1953年に発見されたDNAの二重らせん構造は何よりもそれ自体が「生きものの持つ特徴」をすべて備えるという点で研究者を惹きつけたのです。(中略)DNAに基づくこの営みを見る限り、「生きている」ということの具体的な姿なのです。つまり「DNA」に基づくこの営みを見る限り、「生きている」という現象自体はそのような生き物でも同じであり、大腸菌もゾウも人間も、同じ土俵の上で語れることがわかったのです。(203ページ)

ぞうさんの詩は「おはなが長い」事より「かあさんとの関係性」の重要性を示す

母子のいのちのつながりを密画的(要素還元的、客観的)に調べることは、「そうよ かあさんも ながいのよ」という言葉と重なり合って初めて意味があるのであり、日常的な意味は「そうよ かあさんも」の方が大きいと思います。逆に見れば密画(複雑系的関係図)があると、「ぞうさん」(要素還元的)の意味もより深くなるという事であり、この「重なり合い」こそが重要である。(118ページから再構成、下線部はkocho-3による補記)

言い換えれば「おはな」が長い事に本質的意味はない。他の動物に比べ長い、あるは鼻が長い生き物には「ぞう」がいるという関係性を示しているに過ぎない。

情報は関係性を示すもの、

分子生物学ではゲノムで関係性を示す一方、物理化学においては物質として関係性を示す。土俵=情報の場が違えば表現方法も違う。

蛇足

「おかあさん」も家族という場における関係性の一つ。

まど・みちおさんのご冥福をお祈りします。