毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

目の前のペットボトルのお茶で1700年遡る方法~お茶の時間軸は長く、お茶のスタイルは変化する

一杯の紅茶の世界史 (文春新書)磯淵氏は紅茶の専門家。
茶の祖先は熱帯地方の樹木だった

1961年、雲南省西双版納(シーサーンバンナ)で、樹齢1700年と推定される茶の巨木が、住民によって発見された。2003年3月、地元のガイドを頼んでその地に踏み入れることができた。巴達山はミャンマーとの国境から7㎞の地点で、昔からミャンマーの国境を超えて阿片の密売人が入り込むルートになっているため、公安の警備が厳しい。3月初旬だというのに、西双版納の日射しは強く、抜けるような空の色だった。山々の青さはどう見ても熱帯の空の色だった。山々の緑は淡く、ところどころに花の薄紅色が混ざる。朝夕は18-20度と涼しいが、日中の気温は25-26度で、一年を通じてこの気候が保たれているそうだ。畑にはパイナップル、バナナ、マンゴーなどの、熱帯の果実がなり、野生の象まで出るという。(52ページより再構成)

樹齢1700年! ~ ツバキ科、カメリア タリエンシスという茶の近縁植物

高さは14.5m、地地面から何本もの幹に分かれていて、太いものは直径60㎝ほどもあり、さらには上の方でも幹が分かれている。基部の周囲は2.9mもある。何度かジャンプしてやっと届いた枝先から茶葉を一枚取ってみた。葉の全長5㎝、幅3㎝、今魔見てきた茶葉とは違って丸みを帯びている。表面はつやがあり、なめらかで柔らかい。雲南省茶葉研究所の報告によると、この巨大茶樹は、現在一般的に普及している茶のの木カメリア・シネンシスではなく、それに最も近い近縁植物のカメリア タリエンシスだという。(53ページ)

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 本書の著者磯淵氏とカメリア タリエンシス

http://www.kirinholdings.co.jp/company/history/tea/history.pdf 

 

現在の雲南省から広く伝播

西双版納の少数民族の中でも人口が多いタイ族は、東南アジアの山地を中心に国境を超えて住んでいるいるが、その名の通りタイに最も多く住んでいる。古くは中国の長江中流域に住んでいた民族だ。半ば自制している茶の木から葉をとり、食べたり飲んだりする習慣が、タイ族の拡大と共に様々な地域や民族に広がり、やがてその方法や名前も変わっていく。だが茶の木の葉という素材だけは、変わる事なく伝えらていったのではないか。(67-68ページより再構成)

f:id:kocho-3:20140226080524p:plain(67ページ)

タイ族はBC20世紀中国最初の国家形態の「夏」の中心民族

中国成立前、文明はどこまで遡れるか? - kocho-3の日記

 

蛇足

ペットボトルのお茶が1700年前の雲南省からの連続性をイメージさせてくれる。