毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

元素は物質ではない、状態である~これをイメージする為に必要な「ぼやけた絵}

周期表-いまも進化中 (サイエンス・パレット)  

 

 「量子論の産物」とみる周期表が、じつは量子論の生みの親だった…

 

元素は抽象的概念~周期表

メンデレーエフは(物質の)単体がどんな反応をし、どういう化合物をつくるかもじっくり見つめ、元素のふるまい全体を貫く原理のようなもの(抽象的な元素)を分類したものだ、、、、と彼は強調しています。(61ページ)

 

原子は元素の概念を物質で構成させた場合の具体的要素

元素が性質を包含する抽象的な概念とすれば、原子は物質によって還元的に説明しようとする単位である。

①ラザフォードは、正電荷をもつ原子核のまわりを、負電荷を持つ電子が回っているーという原子の惑星モデルも発表します。(1911年)  (中略)アルファ粒子を薄い金箔にぶつける実験をします。ほとんどの粒子が金箔をまっすぐ通り抜けるのに、ごく一部だけいろんな方向に散乱される、散乱の様子をくわしく調べてみると、原子はほとんどスカスカで、ちっぽけな「核」が中心にあるとわかります。(74ページ)

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核の周りに一つの直径の軌道で電子が回っている。

 

量子論量子力学周期表の関係をまとめましょう。1913年、エネルギーの量子化をもとに水素原子を扱ったボーアは、多電子原子にも考察を広げ、周期表の姿に合う結果を得ようとしました。やがてボーアが使った量子数(主量子数)の他3つの量子数を考えない限り、周期表にうまくあわないとわかります。(105ページ)

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核の周りを電子は多層的な軌道を持つ。(断面図である事に注意)

 

1920年代初め、電子も波のように振る舞うことが、実験でわかりました。電子が回折や干渉も示したのです。たとえば、金属の結晶にあてた電子は、同心円状のパターンを作ります。電子は(じつのところどんな粒子も)粒子と波の性質を併せ持つ。そのニュースは物理学会をかけめぐり、すかさずシュレーディンガーが水素原子の波動方程式をくりく解いて答えをみつけます。(102ページ)

④ ドイツの物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルグが1927年に発表した「不確定性原理」です。(中略)たとえば電子の場合、位置と速さの両方をぴったり決めたくとも、それができないのです。位置をピンポイントで決めようとするほど、速さの値がぼやけてしまい、運動の状態がどんどんわからなくなってしまいます。粒子が「ここにいる」とは言えず、「そこにいる確率がいくら」としかいえない。(104ページ)

f:id:kocho-3:20140225065757p:plain(105ページ)

水素原子はぼやけている。

我々の原子のイメージは米原子力委員会のマーク、つまり「電子は物理的粒子」の段階で止まっていないか?「ぼやけた電子の概念」を記憶する事が必要。

周期表が進化をする、それは抽象的に進化を指す

周期表は元素という抽象概念で物質の性質を説明しようとする試み。元素を説明するのに電子モデルが登場し、一重の電子、多層の電子、ぼやけた電子、とモデルを進化させて元素の、そして周期表の分類の整合性を向上させてきたと理解する。電子モデルを進化させたのは実験と抽象的思考の繰り返し。だから新しい抽象的概念が考え出されると元素の定義がかわり、周期表の並べ方も変わる。

 

 蛇足

電子は物質ではない、状態である。