毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

天文学で考える2100年の「望遠鏡」、それは既に現実~私達が未来を手に入れる為にすべき事

 望遠鏡400年物語―大望遠鏡に魅せられた男たち

フレッド・ワトソン氏は天文学者「誕生してから400年を経過した望遠鏡について、それにかかわった人々のエピソードをまじえて、発展の歴史、巨大化への道のりを辿った物語」

 

最初の望遠鏡はいつ生まれたか?~1608年にオランダで特許が出される

望遠鏡出現に必要な材料はすべて整っていた。すなわち、光学の技術が進み、必要とされる質のレンズが今や製作可能になったこと、レンズが入手可能になりさえすればそれを正しく組み合わせる方法の発見が必然的であったこと、そして、国家間の危機により、その発明を製作者の手から欲しがっている政治家へ渡らせる圧力が存在したことである。(84ページ)

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光学の技術とは~研磨の技術~手を動かした職人達が可能にした

レンズは、徐々に細かい研磨剤を使いながら、固い道具で材料をすり減らして作る。砂は初期のレンズで研磨剤として使用された。最後の磨きには、なめし皮のような柔らかい材質(あるいは現代では松脂)とベンガラ(弁柄、酸化鉄のパウダー)の様な非常に細かい研磨剤が用いられる。(71ページ)

国家間の危機は何を意味したか~戦争

神聖ローマ帝国の一部であったオランダはプロテスタント教会を信奉していた。これに刺激されたスペインのフェリペ二世は、それらの改宗者に転向させようと、恐ろしい異端審問で脅した。しかしオランダおはそれを拒否して1568年にスペインとの戦争(80年戦争)に突入した。オランダ共和国の指導者としてもっとも成功したのがマウリッツ・ナッサウ公であり、1608年9月の最後の週に、望遠鏡と確認できる最初のものが、権力者の彼の手に握られたのであった。(74ページから再構成)

 

望遠鏡発明から400年、基本的なアプローチは変わっていない

望遠鏡はその後、レンズの精度を上げる、大口径化する、レンズの種類を拡大する、望遠鏡を置く位置を環境の良い所にする、必要な信号と雑音を補正する、といった改善によって進歩してきた。

そしてその結果「眼鏡様の2枚のレンズをつけた素朴な筒から、巨大な構造物へと進歩を遂げた。各時代の巨大望遠鏡は宇宙観に変革をもたらしながら、人々に普遍的な注目を集めさせ、望遠鏡製作に多くの才能ある人々を引き入れた。」

 

望遠鏡誕生の500年後,2108年からのメッセージ~重力レンズ望遠鏡

私たちは、最新の機器が、新しい「大疑問」(地球外知的生命探索、SETI)の解決に繫がるのを熱烈に待ち焦がれている。ガリレオ、ハーシェル、ヘール、ラベリの生み出した装置に続く価値のある後継機、それは、宇宙で最初に創出された人工ブラックホールを利用して空間に形成された、直径1光日の重力レンズ望遠鏡で、GLTと呼ばれるものである。(319ページ)

筆者は本書をこの文章で締めくくる。今から50年後までに宇宙論、宇宙誕生の理論、宇宙の構造、これらは望遠鏡の分解能の向上によって解明されるであろうと推測する。その次に出てくる論点は地球外知的生命探索、SETIであると主張する。

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左:地球から1光速/時間の距離

http://www.youtube.com/watch?v=qgMdDT2K12A

 右:(天然?の)重力レンズの概念

国立天文台 | すばる望遠鏡、遠方銀河核からのアウトフローの立体視に挑戦

  

蛇足

2100年から考える宇宙、そしてそれは現実。400年の望遠鏡の歴史が既に証明済。

それに必要なことはレンズを磨き続ける事。