毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

空気をパンに変える方法~我々はどうやってこのテクノロジーを理解するか?

 窒素

空気中の80%を占め、通常窒素原子2個が3つの腕で結合し極めて安定的。 窒素固定とは、空気中に多量に存在する安定な窒素分子を、反応性の高い他の窒素化合物(アンモニアなど)に変換して生物が利用できる様にするプロセス。自然界ではマメ科植物の根粒菌による窒素固が知られている。(WIKIより)

 

大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀  ヘイガー氏は医化系のサイエンスライター。「空気から固定窒素をつくるハーバー=ボッシュ法の発明は、化学の力で文字どおり世界を一変する半世紀をひらいた。固定窒素は“賢者の石”であり、『それを探そうとする者はそれぞれ強迫的な思いにとりつかれ、それぞれの悲劇を味わった』

 

本書から開発の経緯を整理

1907年独の化学者ハーバーは学会で空気中の窒素からアンモニアを合成するデータを公表。

1908年ハーバーと独化学会社BASFの間で「ハーバーの窒素固定」共同開発契約が締結

1910年ハーバーは投入窒素分子の7-10%を固定化するビーカーレベルの実験装置を完成。BASFは社内のエンジニア、ボッシュをリーダーに量産化に着手。

1911年ボッシュは一日2トン生産できる実験プラントを完成させる。

1913年ドイツとフランスの国境に近いオッパウに量産工場を完成させ、時間当たり数トンという大量生産を開始し、肥料の原料として出荷する。

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今となってはオーソドックスな高圧・高温条件下のプロセスに見える。

 ハーバーとボッシュ、BASFの役割分担

ハーバー

200程度に気圧を上げる石英で囲まれた卓上サイズの実験機を製造し、気圧・温度・触媒の最適化を行った。

ボッシュ

BASFの開発責任者としてハーバーの理論モデルで生産する為の高気圧に耐える鋼鉄製反応炉を完成させ、またコストの安い触媒(鉄+酸化アルミニウム+カルシウム)を発見し、量産化技術を確立した。

BASF

色素のアニリン(赤)、インディゴ(青)の量産に成功していた当時の先端技術、化学工業の会社の一つ。多くの化学会社と同様、ハーバー・ボッシュ法以外にも様々な窒素固定技術を援助。

ハーバー・ボッシュ法の持つ意味の現代的解釈

空気をパンに変える方法を発明した二人の男の物語である。彼らは小都市と並ぶ規模の工場を建て、巨額の財を成し、何百万もの人の死に手を貸し、何十億人もの人間の命を救った。~彼らの業績は巨大な工場という形で今も生き続けている。それらはたいてい人里離れた場所にあり、皮の水を飲み込み、大気を吸い込み、地球全体のエネルギーの1%を燃やしている。彼らが発明した機械がすべて停止したら、二十億人以上が飢えて死ぬであろう。~人の体は体重で見ると、炭素、酸素、水素という3つの元素が90%以上を占めている。空気でできた固体と言えるかもしれない。しかし人間にとってあらゆる意味で最も重要な元素は。体内で四番目に多く、自然の中で最も見つけるのが難しい元素ー窒素である。~生物にとって窒素は絶対不可欠な存在であることから矛盾が生じる。私たちは(大気という)窒素の中を泳いでいるが、喉の渇きで死にそうになっている様なものだ。(本書1-3ページから再構成)

窒素に関するデータ

 全世界のアンモニアの年間生産量(2010年)は1.6億tで、そのうち8割が肥料用。生物による窒素固定は1.8億t、雷等の自然放電による生成と排気ガスのNoxで0.4億t。(Wiki)

地球規模で見ると根粒菌が行っている窒素固定とほぼ同じ規模の人為的窒素固定を行っている。これが地球規模の人口増加を支えている。

私たちが気づく事

①データを知る事で窒素肥料により、人類は本質的には飢餓を克服している事を実感。

②テクノロジーの表と裏、両方を知る事が正しい判断を可能にする。

③ 人は目的が明確であれば手段は見つかる。(目的が戦争と結びついていた事は残念ではあるが。)