毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

グローバルスタンダードから 非常識なGT-R、標準化の視点から

 

「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》 (講談社学術文庫)

橋本氏は科学史・技術史の研究家。本書は「標準」と「互換性」がキーワード。

 
標準化の起源は軍事、そして育てたのも軍事

十九世紀と比べて格段に製造技術が進歩した現代では、部品が標準化され互換性をもつことなどまったく当然のこととされている。

ところが十九世紀中葉の世界においては、銃などの精密加工される部品にそのような互換性をもたせ、しかも量産することは至難の業だった。

フランス革命以前の軍事技術者は、いくつかのタイプからなる同一の寸法と形状をもついくつかのタイプの銃と大砲を製造したが、そればかりでなく互換性をもつ部品からなる砲車も製造しようとした。(19-20ページから再構成)

 

その後標準化の思想は独立まもない米国にわたり、標準化による大量生産は開花する。どうして軍事技術なのか?兵器は短期間に量産し、破壊・破損で容易に代替が求められる、標準化は軍事と兵器特有のニーズに合致していたのである。

 

それではどうしてフランスでは普及しなかったか?

(フランスの)方針は兵器体系の標準化という大きな構想の中で、技術者による職人の支配、作業法の細部にいたる製造体制全体のコントロールを目指すものだったといえよう。結果的に、フランスの職人はそのコントロールに反抗し、アメリカは服従した。(258ページ)

 

自動車の量産の変遷を振り返る~フォードからGM

米国T型フォードは1品種の量産に絞り込むが、多品種の大量生産を行うGMに凌駕される。

(GMは)最も安価な大衆車から高価な高級車までのラインナップを備え、それぞれ顧客

の需要にあわせた種類と数量を製造し販売した。「すべての財布と目的にあった車」を生産しようとする(GM社長の)スローンの戦略は、フォードの大量生産の戦略とは好対照をなすものだった。このフォードとGMとの話は、徹底した標準化による大量生産体制が平時の経済市場でもつ欠点(市場の指向性への適応力欠如)を象徴的に示すものである。(193ページ)

 

トヨタカンバン方式

トヨタ自動車の生産体制の管理をまかされた技術者として大野耐一という人物がいた。彼は戦後「カンバン方式」あるいは「ジャストインタイム方式」ともいわれる製造体制を編み出し、トヨタを世界一の自動車製造会社に成長させた立役者である。大野の考案した生産方式は、フォードの量産体制の対局に位置する多品種少量生産を目指す生産方式であった。(中略)米国の製造工場にような豊富な設備をもたない日本の特有の製造方式を模索しようとしがた、それに対する答を求めようとする過程で、大野耐一は「カンバン方式」という製造方法にたどりついた。(198ページから構成)

 

自動車産業は何を標準化してきたか?

私は以下の様に考える。

フォードは自動車そのものを標準化した。

次にGMはビジネスコンセプト「すべての財布と目的にあった車」を標準化し大量生産を行った。

トヨタは自動車ラインそのものの標準化を行った。大衆車から輸出用大型車まで一つのラインで生産する事を始めた。GT-Rは量産ラインで多くの車種に混じって生産されているのを思い出す。

標準化と一品主義、グローバルかガラパゴスか、現在の我々も標準化の議論から無縁ではない。

 

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110126/218147/ 

2011年1月フェルナンドヤマグチ氏の日産栃木工場のレポート

海外の手作り( 失礼 ! )のスーパーカーに比べ、ライン生産のGT-Rの持つ、本質的な価値を実感。

 

蛇足

紙の縦横比率は√2:1=1.14で決まっている。A3を半分にすればA3、√2とは知りませんでした。

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紙の寸法 - Wikipedia