毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人工知能AIは正しい答を出せるか?~人間の持つゲシュタルト的認識力から

人工知能と人間 (岩波新書)

長尾氏は人工知能の研究者。本書は1992年!の発行。まえがきに人工知能の研究は「人間の知性とは何かをコンピュータの立場から問うことであり、人間の頭の中でどういうことが行われていたいるかに関心を持つこと」と説明する。

 

この絵は何か?

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これは何の絵でしょうか?(91ページ)・・・答は下にあります。 

コンピューターチェス~2009年にはスマホソフトが人間に勝つ

2009年には、スマートフォンHTC Touch HDに搭載されたコンピュータソフト「Pocket Fritz 4」がコンピューターチェスの大会で優勝しグランドマスター級の評価が与えられた。Pocket Fritz 4は1秒間に2万局面を読むが、1996年に初めて人間のチャンピオンに勝利したIBMディープ・ブルーが1秒間に2億局面を読むのに比べると演算能力は1万分の1に過ぎず、ソフトの進化を印象づけるものとなった。(WIKI)

 

長尾氏はコンピュータの勝ち方は人間とは違うはず、

心理学では人間の知覚と認識に関して二つの考え方がある。その一つは物事を構成する部分を認識してから、それを組み合わせた形で全体を知るという要素主義あるいは構成主義と呼ばれるものである。もう一つはその逆で、まず全体を把握してから詳細を認識するという立場で、これはゲシュタルト立場といわれている。チェスなどで行われている人間の判断はどちらかといえばゲシュタルト的なものであり、有効な盤面をゲシュタルトとして記憶しているとみることができよう。チェスの上手な人は過去のチェスゲームの経験から現在の盤面の何ステップか先にある有利な陣型をイメージする事ができる。コンピュータのチェスプログラムはこのような人間の頭の振る舞いとはまったくといって良いほど異なった方法で作られている。そして、チェスの名人

が行っているであろうゲシュタルト的な思考に近い方法のチェスプログラムは作られていないし、またこれを作る事は非常に難しいであろう。(中略)しかし方法は違っても機械の方が優れた能力をもつようになることは十分ありうることである。(20ページ)

 

ゲシュタルトとは「人間の精神を、部分や要素の集合ではなく、全体性や構造に重点を置いて捉える」事(Wiki)

 

繰り返しますが本書は1992年の発行

 

 二人零和有限確定完全情報ゲーム

チェスはプレーヤーが最善手を打つ限り、理論上は完全な先読みが可能である。Wikiの解説等から、私は「チェスのソフトが序盤・中盤・終盤という階層を設定しそれぞれのフェーズで別のアルゴリズムが働く事により組み合わせの爆発問題を回避しつつ構造主義的アプローチがゲシュタルト的アプローチの近似値を獲得した、」と理解した。長尾氏の解説の通りである。

人工知能と哲学

長尾氏は本書の最後にまとめる。

世の中に絶対的心理があると考えるよりは、ある世界における心理を考え、その世界を絶対的無限大の世界に拡大していく努力をするという考え方をするのが健全な方法ではないだろうか。(225ページ)自然科学はそういう意味で時空間のより広い世界における真、すなわち客観性、科学における価値を追求していると見ることができる。(234ページ)

 

絵の答 :熊が木に登っている所~ゲシュタルト的認識 

「熊が木に登っている所で、その足だけが見えている図である。」この説明を聞いて初めて熊が見える。人間はゲシュタルト的認識を自然に行っている。

蛇足

このイラストを検索してみたが見つけられなかった、人工知能の限界。