毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

お前は何者だ?東洋的学問と西洋科学のはざまで、

パラダイムと科学革命の歴史 (講談社学術文庫)昨日に続き、中山氏の著作を紹介。

お前は何者だ?

1950年代にハーバード大学で科学史の訓練を受けている間中、自分が生まれ育った東洋と西洋の学問的伝統な差を常に意識されてきた。秦漢の中国では官僚制と文書主義が起り、日本では七世紀後半にそれが始まった。科学に限っても、西洋の科学のパラダイムイスラム科学、さらにインド科学も同じく、西洋科学に属するものに対し、伝統的な中国や日本の科学はパラダイムが違って、まったく共通するものがないのである。(341ページ)

東洋の学問

中国人にとって学問の方法は記録し分類することであった。中国ではあまり論争 して否定したりせず、一切の博物的データを受け入れて平和裡に保存蓄積する。法則性と変速性は平和共存し、機器を生じさせないようにできている。

西洋の科学

西洋では合法則性の一つの箱に固執し、その箱に入らない変速性を無視するが、それらがあまりにも多くなると危機が生じ、新しく変速性をも含みうるより大きな箱を作る。これが科学革命である。ニュートン力学から、アインシュタイン相対論への科学革命はその好例である。(中略)思うに、西洋の学統は変則性を認めない悲寛容性に特徴があるともいえよう。超越的な神が一切を支配する。人は神の意志に従わなければならぬように、自然も絶対法則に従わなければならない。

パラダイムと通常科学

パラダイムは「規準化された学問のその後の発展コースを規定するもの」(39ページ)、通常科学が「ある言語を共有する科学的集団によって、何か新しい通常科学的仕事をして、学界に貢献することができる(もの)。」(350ページ)

中山氏の要旨を整理

①西欧の学問がギリシャ、ヘレニズム、イスラム、ヨーロッパ、そのヨーロッパでも、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、米国と学問の中心がシフトし、一神的パラダイムシフトを可能とした。

②中国は中華体系の中での多様性は認めるがそれは進歩でなく、既に並列に紙に記録されている。官僚制を支えた科挙の目的は科学の振興ではなく官僚の選抜、これが西欧に比較し停滞を招いた。

天文学多様性と通常科学を整理

天文学は現在もコペルニクスガリレイ、ケープラーの作ってきたパラダイムの中で一つ下のレイヤーでの多様性の受容と観測技術を高度化するという通常科学を押し進めている。これは科学者、あるいはアカデミズム という権威と多額の費用を必要とし排他性を生じさせる可能性がある。

蛇足

日本人にとって高いレイヤーでの多様性は当たり前、これに西欧的な他とコネクトし論議する力が加わる事に付加価値がある。これがわかれば多くの面で活用できる。