毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

シマウマの縞とコンピュータ原理チューリングの関係

自然が作り出す形、たとえばシマウマの縞はどうやってできるか?シマウマの耳の位置は遺伝子によって決まっているが、縞の位置は個体によってまちまち、=遺伝的に決まっていないという事。

かたち: 自然が創り出す美しいパターン

ボール氏はサイエンスライター、自然に潜むパターンを解説する。

アラン・チューリング(1912-1954)

の数学、論理学、暗号解読、そしてコンピューター学者。現在のコンピュータの論理的基礎を気づいた人物。本書でチューリングは生物に生じる模様の生成メカニズムも研究した事を知る。

チューリングは(活性因子ー抑制因子系で)こう考えた。有機体が成長していくあいだにモルフォゲンと呼ばれる化学物質が、組織の中に拡散して、異なる細胞の遺伝子のスイッチを入れたり切ったりするのかもしれない。例えば、脚に成長するよう細胞に言う「脚喚起因子」がありうる。そして皮膚の色素沈着に影響を及ぼすモルフォゲンもありうるとチューリングは推測した。(中略)モルフォゲンAは自己触媒作用を受け、Aの生成速度は、既に存在するAの量に比例するとしよう。もう一つの肝心な要素は、Aの合成を抑制する化学物質Bの形成をAが促進することだ。(213ページから再構成)

 

f:id:kocho-3:20131226073708p:plain(口絵より)

 重要な事:あくまで化学現象である事

AとBで拡散速度に違いがあると、Aの増加は局所で優勢 をもたらすが、長いスパンではBが優勢となり連続した不均一を形成する。これは無生物おける化学現象として説明がつく。

モルフォゲン(morphogen)は発生、変態、再生の際に局在する発生源から濃度勾配を持って発せられ、形態形成を支配する物質である。モルフォゲンは発生源の近くの組織で、高濃度に達したり、時には長く持続したりして空間的情報を与える。(Wiki)

生物のボディデザインからみた活性因子ー抑制因子系の持つ意味

チューリングが念頭においていたのは、単に一続きのメッセンジャー分子(伝令分子)が細胞に、ああしろ、こうしろと告げるということだけではなかった。チューリングの模様は活性化作用と抑制作用の競合を通じてもたらされる。これは「グローバル」(全体的)な現象であり、特定の場所で特定の道筋に沿った発生を引き起こすローカル(局所的)な事象によって支配されているのではない。(中略)新たな機能ーたとえば視覚や飛行を、新たな一組の遺伝子を使って何もない所から発明しなくてもいい。既に存在する遺伝子が抑制され、作動させらる仕方がわずかに変化して、古い構造を修正するだけなのに、完全に新しい機能を担う構造あ生まれる。(405ページ)

蛇足

活性因子ー抑制因子系、例えで言えばキツネ(捕食者)とウサギ(獲物)の数のサイクル。キツネが増えればウサギは減り、ウサギが減ればキツネも減る。ウサギにとってキツネは抑制因子。「かたち」は複雑に見えて極めてシンプルな法則とランダム性によって多様化が生まれる。これは無生物でもあり得る事である。