毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間は自らの意志でのみ進化する。

 

進化とは何か?

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))長谷川氏は行動生態学の研究者。

進化とは生物が世代を越えて時間とともに変化すること。進化の結果として生物が環境に対し適応的になる。進化の仕組みは自然淘汰によって生じ、生物の固体には変異があること、変異の中には遺伝的に次世代に受け継がれるものがあること、により理論化されている。(ダーウィンの進化論、40ページ)

進化論に関する誤解

 ①  自然淘汰には目的はない

  進化は変化であって進歩ではない

  適応は万能ではない

 

生物は環境に対し上手に適応している例が多く、また簡単な構造から複雑な構造へと変化をしてきた、これらから生物は神の視点からデザインした、人間が一番高等である、といった価値観が生まれるが進化論ではこれらの事を理論化した訳ではない。(64ページから再構成

分子進化の中立説

遺伝子に起こる変化の多くは適応としては無関係の中立的変異である。中立な変異が偶然によって固定化されたもの。

 

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 固定化のプロセス~ランダムウォークモデル(ある種の中に100%固定化するか、消えていくか)

 上の図のスマイルマークが遺伝子であり、100%を越えれば種全部に保存される、0%を着れば消えていく。進化に中立な遺伝子は適応や淘汰とは関係なく、確率の問題で固定化するか否かが決定されるという分子レベルでの遺伝子変化の分析からの仮説。(81ページから再構成)

  中立論は遺伝子レベルの変異と適応、自然淘汰は環境と個体あるいは種レベルの変動、であり大きくレイヤーの違う点に注意が必要と理解する

事例:南極のノトセニア亜目の深海魚(銀ムツ)

 

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南極にはアンチフリーズ・グリコペプチドというタンパク質(AFGP)を持っており-2°の海水でも血液が凍らない、魚がいる。遺伝子の分析から以下のモデルが考えられている。

①  ノトセニア亜目の魚の祖先はTLP(トリプシノゲン様プロテアーゼ)というタンパク質を持っていた。

②  祖先集団の一部の魚に遺伝子の重複が生じ二つ目の遺伝子に中立の変異がランダムに発生した。これがAFGPを作り出した。

③  2400万年前に南極が大陸移動により孤立し、周囲に冷たい海流が生じた。この梅ではAFGPを持つ魚だけが生き残った

まとめると「遺伝子の重複、そこに蓄積する中立な変異、環境の激変、そして自然淘汰と適応」というプロセスになる。(115ページから再構成) 

人間と生物の違い~私の理解

 

生物は身体の変化が遺伝的変異によって生じる

変化には世代交代による遺伝子変異の時間が必要である。

一方人間も生物同様長い時間をかけて進化をしている。しかし一つには人間は自ら思考を変化させる事で進化によらなくとも瞬時に(適応性を)変化できるという利点がありながら、この変化は身体性を伴わない=再現性が相対的に低い、と理解をした。

 

 

蛇足

人間が思考を変化させるのは進化ではなく、自己の意志であり神の視点は不要である。