毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

日本語の不思議 ~ルビをふる

 

 振仮名の歴史 (集英社新書)

今野氏は日本文学の研究者。本書の帯で振り仮名の多様性が一目でわかる。概念の説明、発音の表記、言い換え、外国語の導入、、、。昭和期に入り当用漢字とともに振り仮名は制限された、しかしながら表現においては今もルールに縛られる事なく振り仮名が使えるという事に気づかされる。

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 ルビを振る

振仮名のことを「ルビ」とよぶことがある。これは英語「Rubby」からきている。(中略)Rubbyは5.5ポイントの活字の大きさを表す呼び名で、日本では、和文本文用の大きさとして使われていた五号活字の振り仮名として使用された小型活字(七号=5.25ポイント相当)がこの「Rubby」の大きさに近かったので、日本の振り仮名用活字をルビーとよぶようになり、そこから転じて振り仮名そのものを「ルビ」と呼ぶようになった。(141ページ)  知りませんでした!

振り仮名の起源

720年に成立された日本書記は中国語文で書かれており、中国語を理解しない人が読む為に「返り点」や送り仮名、振仮名なども含めた「訓点」が使われるようになった。(70ページより抜粋)

明治期の振り仮名

今野氏の解説に従って進める。明治初期は小新聞(大衆紙)は総振仮名、大新聞(クオリティペーパー)は振り仮名なし、で読者層を選別していた。明治20年頃(1887年)、今から126年前に日本の「近代文学」が成立した。新聞、文学、各種公文書ではその対象などに応じて「右振仮名」=読み方、「左振仮名」=意味、説明、など様々な表現が使われていた。例えば欧州という言葉には「おうしゅう」という発音と「ヨーロッパ」という概念の振り仮名をつけられる。

昭和期の振り仮名

昭和13年(1938)に当時の内務省が「振り仮名がなくても、誰でも読める様な文章を書く」(振り仮名廃止論)を受けて子供雑誌の指針として振り仮名の制限を指示する。昭和21年(1946)に「当用漢字と振り仮名は原則として使わない」という方針が明記された。(209ページより抜粋)

振り仮名の変遷

中国語を読む為のものから始まって、新しい概念を漢字で表記、読みと意味を振り仮名を使って説明、今は標準化が進んでいる。現在では新しい概念は漢字を経由する事なく、カタカナで取り込んでいる場合が増えたという事であろう。振り仮名だけで見ても日本語はダイナミックに変遷している事、表現の自由度が実感できる。