毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球システム科学とメタンハイドレート

 

 地球の内部で何が起こっているのか? (光文社新書)

海洋研究開発機構『地球深部探査船「ちきゅう」』プロジェクト関係者により執筆された。

ちきゅう

「ちきゅう」全長210m、高さ160m、6万トン級の世界最大級の研究船で2005年竣工、水深約4,000mの海底から最大約7,000mまでを掘削できる。(WIKIなど)2013年3月には石油天然ガス・金属鉱物資源機構(資源機構)は、「ちきゅう」を用い、愛知県と三重県沖合の海底で世界初となるメタンハイドレートの天然ガス海洋産出試験に成功した。(日経新聞

地球システム科学とは

「地球内部の現象と我々の住む地球表層の海洋大気、生物、そして人間圏の営みは、従来考えていたよりはるかに密接な関係にある」というコンセプトを紹介する。この地球観のエピソードとしてバイオスフィア2とは、米国で1991年から行われた人工生態系で果たして生存することが出来るのかの実験で、人類の宇宙空間への移住の検討の為であった。

Biosphere2

温室と外界は完全に遮断されたが、エネルギーだけは送り込まれ、恩藤の調節は行われた。物質のサイクルは綿密に計算され、特に温室内大気のO2とCO2の循環には注意深い設計がされた。

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数カ月して予想できないことが起こった。温室内部の大気中のO2が減ったのである。O2の消費は土壌中に含まれる微生物によって過剰な有機物が分解されて生じ、CO2は建物のコンクリートに含まれる水酸化炭酸カルシウムに吸収されていた。(120ページ) 

地球システム科学の見地から

本書によれば「土壌とコンクリートという地球にたとえれば地表から岩石圏の役割について十分理解していないために失敗した。事実、コンクリートによるCO2の吸収等については考えにも入れていなかった。また土壌地の微生物による有機物の分解過小評価していた」、「私たちは地球をまだ知らない」と分析する。地下微生物圏の研究が我々の生命感の修正をもたらす事を期待する。

蛇足

 

建造費は567億円(2011年計画当初の発表)